表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/5

6ねん1くみ、春

「あずって、好きな人いる?」






白い肌にぱっちりした目。ふんわり笑った顔がすごくかわいい、みっちゃん。


あたしはみっちゃんがだいすきだったし、みっちゃんもあたしをだいすきだった。







桜。


入学式。


クラス替え。


班決め。


委員会決め。


児童会選挙。



4月5月って、何気に色々あるんだよね。



なかなかあわただしいなぁ…と、11歳のあたしはランドセルをしょって毎日学校に行った。








「副委員長は、ヤサカさんがいいと思いまーす」


げ。


「うん、ヤサカがいいと思う!」


「あずだったらしっかりしてるし」


「それじゃぁ、ヤサカ、頼んでもいいか?」


「……」


まわりを、ちらっと見てみる。


みんなみんな、あたしを見てる。


「頼む!」とか、「ごめん!」っていう目で。


「ヤサカ?」


「……はーい」


仕方なくあたしは返事をした。


もー、いっつもこうなんだ。


こーゆーめんどくさい役はいっつもいっつもあたしなんだ。


保健委員自体もめんどくさいしさぁ、委員長は絶対仕事しないからあたしがやんなきゃいけなくなるんだ。


もー。










「ヤサカぁ」


「なによぉ」


「今度のさ、代議委員会いつだっけ?」


「来週の水曜……って、あんた会長なのにそんなんでいいの!?」


「あー、水曜かぁ。さんきゅー」


「……」



砂田スナダ 紀明ノリアキ


蔵谷クラヤ 泰輔タイスケ


志摩シマ 真一郎シンイチロウ


梶田カジタ 美月ミツキ


八坂 あずみ(ヤサカ アズミ)。




みっちゃんとあたしは、幼稚園のころからずっといっしょの友達。


今までなかなか同じクラスになれなくて、最後の6年生でやっといっしょになれて、すごくうれしかった。


スナダとクラヤとシマも、おんなじような感じで。


5人一組で、先生がものぐさなために1年間ずっと変わらない班は、こうなった。




児童会の、会長をやっているスナダ。


自分で立候補して、演説して、当選したんだ。


すごいよね。


すごいのに。



「たいちゃん、しましん!見て見て、ホラホラ」


「はははは、すげー!なんだよそれー」


「こないだできるようになったんだよ、ヤサカぁ!見て見て」


「えー?」


せっかく、めーちゃんとももちゃんとしゃべってたのに。


うるさく呼ばれて振り向いたら、




なんか、ピクピク耳を動かしてるスナダ。




「アハハハハハハ、何それー」


「こないだ気づいたんだって、すごくねー?」


「すごいけど変ー」






スナダは、けっこうしっかりしてて、頭も良くて、スポーツもできる。


だけど、もてない。

なんでかっていったら、遊んでるときが超おバカだから。

いっつもこんなふうにしてふざけてる。






















「あれ?」


「ん、どした?」


「リストバンドがない」


「まじ?どんなやつ?」


「んと、白くて、黒い文字が書いてあって……」



水曜日の代議委員会が終わって、教室に戻ったら、


あたしのリストバンドがなくなっていた。


確かに、はずして、机の上においといたのに。




代議委員会は、児童会の人と、委員会の委員長と副委員長しか出ないから。


このクラスからはスナダとあたししか代議委員会には出ない。



だから、教室には誰も残っていなくて。


スナダとあたししかいなかった。




「落ちてたらけっこー目立つはずだよなぁ…白いんだし。机においといたんだよな?」


「う、うん」


「じゃ、どーしてないんだろ…もしかして盗まれたのかな?先生に言ったほうがいいかも」


「うーん、そうかなぁ?」


「もうちょっと探してみよっか」




そう言って、眉間にしわを寄せていろんなトコをあけたり閉めたりして、スナダはリストバンドを探してくれた。


外、暗いのに。




「スナダぁ」


「んー?」


「別に、帰っていいよ?なくなったのあんたのじゃないんだし」

あたしがそう言うと、スナダはちょっとびっくりしたようにあたしを見て。


「や、いいよ」


そう言って笑った。










そのときからだと思う。


はじめてだった。











次の日になったら、なぜかリストバンドは何度も見たあたしの机の中に突っ込まれてて。


なんでぇ?って、すっごいすっごい思ったけど。


「よかったなぁ!!」


って、にぱって笑った、スナダのその顔で。


まぁ、いいか、っていう気になっちゃったりとかして。




そんなのより、スナダが一緒に探してくれたこと、とか、笑いかけてくれたこと、とかのが…







なんか、









…うん。







なんだろ、この感じ…とか、思ったんだ。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ