three years latter ...
明るい内容ではありません。ハッピーエンドが見たい方、是非他の作家の素敵な小説を御覧になってください。また、文中筆者の事を「俺」と呼称しているのは、等身大の筆者を表現したとお考え頂けたら嬉しいです。 長くなって済みません。それでは、本文を御覧下さい。
彼女との初めての出会いは、今から三年前。中学三年に同じクラスになった時だ。初めて見たとき、鳥肌が立った。俗に言う、一目惚れだった。
「よろしくね。」
たまたま隣の席になった彼女は、俺にそう言った。元々女の子に好かれない俺にとって、久しぶりに女の子に話かけられて(それも飛びっきりの可愛い娘に)まともな返事が出来るはずはなく、ただ曖昧に
「うん。」
としか言えなかった。そんな俺に対し、彼女は少し複雑な顔をして微笑んだ。
そんな彼女に、元々無口な俺は、淡い恋心を抱いた。同時に、高嶺の花である彼女に対する負い目を感じていた。
時が経ち、受験の日が近付いていた。
たまたま彼女の志望校は俺の志望校と同じだった。
俺たちは推薦の結果が合格だった。
俺は、友達が俺よりワンランク上の高校の推薦に落ちたのを聞いて、手放しで喜ぶことが出来ないでいた。
合格者達の歓喜の輪が渦巻くなか、同じ合格者である俺は沈んでいた。
合格者がいれば不合格者がいるのは、受験では当たり前だ。
それが全てだと言っても過言ではない。当たり前のことじゃないか。そういうものだ。そう自分にいい聞かせ、無理矢理自分を納得させた。
教室に戻ると、三種類の顔をしたクラスメート達がいた。合格者、不合格者、そのどちらでもない者。彼女は一人、机に座っていた。俺は彼女に話し掛けた。俺から話し掛けた数少ない記憶だ。
「結果、どうだった?」
彼女は俺の顔を見ずに、静かに答えた。
「受かったよ、、、。」
彼女らしくない沈んだ表情に、俺は疑問に思い、聞いた。
「何でそんな悲しそうなの?」
「だって落ちた人もいるじゃん。」
この時になって初めて、彼女の眼が赤いのに気が付いた。彼女は誰にも気付かれない様に泣いていたのだ。
「そっか、、、」
「君は?」
彼女は俺の結果について聞いてきた。
「受かったよ。」
「何で?もっと喜びなよ。」
彼女は、そう言った。
「アイツが、駄目だったから。」
俺の視線の先には、合格者を羨ましそうに見ている友達がいた。彼女も俺の視線を追い、それに気付いた。恐らく彼女はそのとき、俺に何か言おうとした。しかし俺はそれを制する様に、黙ってその場を離れた。
春になって高校に入学した。彼女は、同じクラスになった。彼女と話すのは、決まって現代文の授業だった。現代文の授業では、再び隣の席になったからだ。
一ヶ月程した頃、段々と疎遠になった。元々付き合っていた訳じゃない。当たり前と言えば当たり前だが、俺は個人的にストレスが溜っていった。
別に彼女に腹が立ったのではない。
中学時代の親友に、突然絶縁されたからだ。
意味が分からなかった。
同時に、同じ高校に入学した友達がどんどん俺を無視した。訳が分からなかった。俺は彼らに嫌われる言動をした記憶は一切ない。突然の喪失。俺は自分のアイデンティティが崩壊した。当時荒れに荒れた俺は夜になっては破壊行動に走り、やり場のない怒りに身を任せていた。同じく疎外感にストレスを感じていた、弟にも等しい二人の後輩もそれに参加した。
ある日、俺を無視しない友達の前のメールアドレスからメールが届いた。
『お前ムカつくから死んでくれ。ってかマジ死ね。』
その文章の下に、さらに文章が続いていた。
『てめえキモイしウザイから、マジでこの世から消えてくれよ。』
複数の人物がそれを送ってきたのは明らかだった。
卑劣な奴ら。いよいよ俺はブチキレた。どうあっても俺の存在を否定したいらしい。俺を無視するようになった友達も俺の前のアドレスから似たようなメールを送りつけられたに違いない。友達にそのメールを見せたところ、その友達は青ざめた。全く身に覚えのない文章でブチキレた俺の気持ちを理解したのだろう。
その年の秋、俺は警察に捕まった。ムシャクシャして、とある施設に忍び込んで、備品を盗んだからだ。始めは、別になんとも思わなかった。しかし、弟のような後輩二人にも迷惑がかかってしまった。俺はそれを恥じ、心の底から反省した。
停学処分が終わり、改めて登校してきた際、彼女と眼が合った。彼女は何事もなかったように少しの間だけ微笑んだ。それが、俺にとって救いになった。
二年になり、彼女と別のクラスになった。三年にクラス替えはない。それは少しだけ憂鬱だった。彼女とは日本史の授業で一緒だったが、席が遠く、また長い間話はしていなかったから、話すことはなかった。
ある日の帰りの駅のホーム。歩道橋を登っていた俺に、
「今晩わ。」
と彼女が声をかけてきた。
「ああ、、、」
俺は停学処分を受けてから、今まで以上に人に遠慮して生きてきた。そのため以前にも増して無口に、そして無愛想になっていた。その時俺は駅の自動販売機でアイスを買って、戻る途中だった。
「なにしてるの?」
「アイス買ってきただけ、、、。」
彼女が二本のアイスを持っているのを見て、
「、、、なんで二つあるの?」
と聞くと、
「こっちは友達の分。」
と言った。彼女は脚を骨折した友達の分のアイスを持っていたのだった。
「そっか、、、。」
ただそれだけの会話だった。ただ俺にとって、彼女に嫌われていないという事実が大事だった。
彼女とすれちがう時、会話はなかった。しかし、眼が合った。そんな日々が続いた。
三年になって、友達の間で恋の悩みを打ち明けた人がいた。ある朝、彼は意中の娘に告白をした。結果は、残念な結果に終わった。
そんな友達の姿を見て、俺は彼女に想いを伝えようと思った。
しかし、彼女に彼氏が出来た。
彼女は、彼氏に尽していた。
俺には見せたことのない心からの笑顔で、彼氏の腕に抱きついていた。それを見た俺は、ロッカーの前に腰を落とした。胸が痛んだ。一年の時、友達の大半を失った事件とは別の痛みが俺を支配した。苦しい。胸がえぐられたように、ぽっかりと穴が空いたような感覚。視界が歪み、世界が回転を始めた。次に俺が立ち上がったのは、それから二十分程経ってからだった。
「大丈夫か?」
友達の一人が聞いてきた。俺は、その質問に笑いがこみあげてきた。やがてそれは声になり、放課後の教室に響き渡った。初めて、愉しくないことに笑った。心が泣いていながら、体が笑った。そんな俺を友達は気味悪がった。
一ヶ月程して、地元で祭りが開催された。
屋台を回る人々の中、俺は空虚な気持ちで人波をかきわけて歩いていた。
自分でも、死んだような目をしているのが分かった。すれちがう人々は、俺を避けて歩いた。道行く人々に、きっと今にも死にかねない顔に見えたのだろう。友達に会いに歩いていた。それが、裏目に出た。正面から、彼女とその彼氏が並んで歩いてきた。彼女は俺と眼が合うと、表情を曇らせた。そこへ、友達が前方から声をかけてきた。
「おーい!こっちだ!」
友達の何人かが、俺と彼女がすれちがうのを見ていたのだろう。俺の目を見て頷き、肩を叩いて励ましてくれた。
「よし。射的やろうぜ。」
「、、、ワリィ。やっぱ俺、電車あるから帰るわ。」
「、、、そっか。じゃ、また明日な。」
その足で、俺は駅へと向かった。最終列車に乗り込み、ボックス型の座席に座った。座った途端、やるせない感情が芽生えた。この日は金曜日。彼女は電車に乗らなかった。
その晩、彼女とすれちがう時のあの曇った表情が脳裏に焼き付いて、離れなかった。朝が来るまで、部屋の隅で眠れずにいた。
俺は彼女に恋をした。それは、一方的なものだ。それでも、高校生活を彼女への想いを糧に過ごしていた俺にとって現実は残酷だった。いや、過去の自分がこの現実に導いたのだ。この時、俺は気付いた。彼女への想いを断ち切り、ふらふらと立ち上がった瞬間に。
愛していた。
愛何てものを説明は出来ない。それでも、俺は彼女を愛していた。決して届く事はないけれど。今ではもう、伝える訳にはいかないけれど。俺から、愛するあなたへ、この言葉を贈ります。
どうか、幸せに過ごして下さい。君には笑顔が似合うから。
どうか、彼氏の人。彼女を幸せに導いてくれ。君にはそれが出来るから。
俺ではなく、彼女が愛する君には、それが出来るから。
どうか、お幸せに。
三年前と同じように、俺たちは受験戦争に突入している。
読んで下さり、ありがとうございました。筆者以外にも、似たような経験をなされた方も大勢いらっしゃるかと思います。そんな方々に、筆者の正直な気持ちが少しでも伝われば幸いに思います。汚い文章でした。まだまだ書き足りないエピソードがありますが、汚い文章を省み、敢えて割愛しました。前作の後書きで、ファンフィクションを書いていると記しました。現在鋭意執筆中です。先にこんなもの書いてしまい、申し訳ありません。最後に、この小説は個人の中傷などの意味は一切含まれていない事をここに誓います。