第二話 現状
この国は敵国との戦において敗戦が重なり国土の多くを失っていた、だがまだ崩国とまではいっていなかった、残された国土もかなり減ったが上手く立ち直せば何とかやっていけるだろう、周辺の小国よりはまだ、この国は大きかった。
だが問題があった、国の中心だったこの城に敵国の手が届く所まで来ていたのである。
そして現王とお偉いさん方が考えたのは、一度はこの城を諦め体勢を立て直す、との事だった。
しかし代々先代の王達が守ってきたこの城をそう簡単に渡しては恥じとなる、との意見が出る。
ならば形ばかりの兵を置き、奴に城の警護を指揮させましょう、そうすればついでに厄介払いが出来る、逃げれば・・・それが結論だった。
男に下された命令は・・・
【汝、身命を懸け我らが城を守らん、捕虜になる事を恥と思え、亡骸は朽ちようとも未来永劫名と魂を我が祖国に刻まん】
男はこれを見て苦笑いしていた。
「おいおい、無理言うな、俺の事どんだけ嫌いなんだよ」
ムカついた男が仕返しに英雄の剣を盗む事にしたのはこれが原因だった。
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命令を受け数ヵ月後。
「敵本軍およそ5万、先行として2万の兵が此方に向け進軍・・今のうちに街を警護している兵を呼び戻すべきでは」
俺なんかに付き合う事になった可哀想な副官が先見の報告を聞き俺に言う。
この城は孤高に聳え立ち、馬で2時間ほどの場所に大きな街がある、何でもこの城は堅牢な造りをしており大昔、英雄の時代は幾度の激戦を耐え抜いた名城と、かつて年老いた爺さんに聞いた事があった。
話が反れたが、男は英雄の剣探しの為邪魔な兵を上に黙って街に移動させていた。
予想でしか言えないがお偉いさん方は城を捨てるか否かの時、英雄の剣の事も議題に上がっただろうな、最も封印術の鍵だった鞘は何故だか俺の手の中だったし、あの部屋は隠し部屋だしな。
ちなみに重臣のみが入室を許される書庫には隠し部屋の在りかを記した書は無かった、恐らく処分されたか、または持っていかれたか、結局それを発見したのは駄目もとで調べた一般の書庫だった。
なぜこんな重要書物が此処にあるんだ、見つけた時はそう思い理由を考えたが何故かニヤケ面をした前王の顔が思い浮かび、考える事をやめた。
と、また関係ないことを考えていた男に可哀想な副官は早く返答を、と言った表情を向けていた。
「でもよ、2万の兵相手に4千と少しの兵でどうやって戦するよ?」
正論だ、男は天才軍師じゃない、ましてや軍を操る才も人並みだった、剣士としての腕にはそれなりの自信はあったが、今までは人の道を外れた外道の悪略で功績を挙げてきた、それでも同等の兵の数が必要だ、正攻法で勝つには2万の兵に対して最低でも3万は必要だった。
「し、しかし」可哀想な副官はそんな事分かっているといった顔をしていた。
「お前な、国のお偉いさん方は俺らに死ねって言ってんだ、お前は喜んで死にますって、言うのか?」
以下同文な副官は困った表情をしている
「俺は御免だ、この国とも潮時だよ、お前の悲愴面をもう拝めないのが唯一の心残りだ、他の兵卒共には各自、自らの意思の元に行動せよ俺よりの最後の贈る言葉だ、とでも言っておけ」
そう言うと男は悲愴漢を残しそそくさと、その場を後にした。
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所変わって、男は自分の部屋にて荷物の整理をしていた、男の荷物は多い、とはいえないが、これからは再び放浪者に戻る、徒歩になる為持って行く物と置いて行くものを分けている。
下手をすると、これまでの残虐非道の悪略と今回の敵前逃亡の罪で賞金首にされる可能性がある、それに加え国宝の窃盗がばれると国内だけでなく世界共通の大賞金首、詰まりは大罪人の烙印を捺されかねない。
念入りに英雄の剣を布で包み背中に背負う、自分の荷物の入った鞄を担ぎ、腰に[オッサンの刀]を差す、何でも何処ぞの小さな島国の伝統の剣らしい。
この世界の剣は叩き斬る、つまり斬ることも出来るが打撃の意味合いが強い、だがこのオッサンの刀は斬る事を追求した代物だ、その為に反りが強い、一度オッサンが重装備の相手を一刀の元に両断した時はビビッタ「チェスト!!」とか叫んでいたのを覚えている、何でも相手の間合いの中で3秒ほど集中?するか、気合を波らんで捨て身で斬りかかる必要があり、俺も止まっている相手なら鉄だろうと斬ることが可能だが、とても死合のなかで使うほど気は狂って無い。また使い方が難しい、硬化の術式が錬りこまれているからそうそう刃が欠ける事は無いが、振り方を失敗すると骨で止まってしまう、だがそれが楽しい、死合と実戦、当たり前だが修行の中で少しずつ使い方を理解していった、だが未だその先は見えず深い。因みに刃文は直刃であり、名は彫っていない[無銘]、拵えは全体的に黒、鍔は実戦向きに装飾が無く硬質を意識した造り、小柄等はついていない。
「やろうと思えば属性術式を錬りこむ事も可能だが、そんな事をすればこの名刀の全てが台無しになる」
これはオッサンの言葉だ、あと刀は切れ味の代償に刃こぼれがしやすい、刃毀れさせない自信がないので、オッサンに黙って硬化の術式を錬り込んだ、オッサンに見抜かれて物凄く怖かった。
次に壁に立てかけた槍を見る、こいつはかつて悪略に嵌めた敵将の正義漢(愛称)の得物だった、属性術式火を練りこんである、俺はこの武具を気に入り正義漢の亡骸が許可をくれたので勝手に使っている、だが如何せん俺は槍を学んだ事も無ければ触った事すら無かった、今は我流だがある程度使えるようになったが正義漢の槍術には遠く及ばない、この槍はどちらかと言うと対多人数との戦に優れている為雑魚はこいつで戦うようにし、剣豪とはオッサンの刀で死合。
この槍は気に入っているが残念ながら置いていくしかない、かさばるというのもあるが1番の理由は見てくれだ、真っ赤で派手だった。
オッサンの刀は俺にとってオッサンの形見でありオッサンの強者、いや剣豪と死合たい、という想いが入った刀だった、無論想い入れ等と言う言葉で片付けたくない一振りだ、だが世間の目から言えばこの派手な赤槍の方が印象強いらしく、俺は敵国だけでなく自国からも(赤槍の外道)と失礼な呼ばれ方をしていた。
その為この赤槍を持っていると賞金稼ぎに「私が赤槍の外道ですよ!」、と叫んでいるような者だった。
男は槍を見る、これまで立場上、単独で数人との戦も多くあり、こいつのお陰で随分と助かった。
「ありがとな、戦友」
赤槍に礼を言うと男は自分で言ってて恥ずかしくなった。
「さて、そろそろ行くか」
そう言うと男は机の上に置いてあった短剣を手にする。
それはただ刃の付いているだけ、安さだけが売り、と言ったようなとても戦闘に耐えられるような代物ではなかった。
何故剣の道を生きるこの男がこんな紛い物を持ってのか、何と言われようと男がこの短剣を捨てる事はなかった。
その短剣を懐にしまい自分の部屋から出る。
しばらく歩いて男はふと想う、そういえば自分が此れほどの長い年月を一つの国で過ごした事はあっただろうか・・・。
この城とも縁があったな。
もはや二度と訪れる事の無いであろうこの城を、少し歩いて見たい、気まぐれだろうか男は歩き出す。
さ迷うように城内を歩き回った男は城の1番高い塔の屋上にある空中庭園にたどり着く、この場所には覚えがあった。
「・・・ここは」
あいつの好きな場所だった、此処からの景色を自慢していたのを覚えている。
俺はあいつが嫌いだ、どんな時も凛々しく、国を想い、そして誰よりもこの国・・・いや故郷を愛していた。
俺には故郷が無い、幼少の頃より父と旅をしていた、父は決して自分の故郷については話さなかった、そんな俺に、あいつは言った。
「お前、故郷は何処だ?」
「・・そんなもん知らん、考えた事もねぇ」
男の言葉は荒かった、年下であり身分も下のこの男に対し王は笑いながら言った。
「ははは、お前そう悲しい事をいうな・・・よし、決めたぞ」
王は満面の笑顔だった。
「今日から此処がお前の故郷だ」
男にとってその笑顔は眩し過ぎた。
おわり
見て頂きありがとうございます、大まかな現状を書きました、次の話から過去編になります・・・次回からが、本当の意味で物語の始まりです、男の性根がどんどん腐っていくと思いますが、とりあえず次回もよろしくお願いします・・




