最終話・・・終焉・・・
世界は夢 想いは重く 人は幻
男は城を見上げる。
暫くすると、英雄の剣を取り出し地面に突き刺す。
突き刺したままその場を少し離れる。
すると轟音と共に炎が、物凄い剛炎が城を囲うように・・・護るように立ち上がる。
さすが・・・英雄の剣と、それに練り込まれた炎の古代術式だ、俺がこいつを使いこなせれば、永遠と燃やし続けられるんだけどな、正直たった一度炎を燃やしただけで精神というか、何かを持ってかれた、とてもこんな代物を実戦で使えない。
俺じゃあ精々3日が限界だ、まぁ俺が居なくなっても3日はこの城に誰一人近づく事すら出来んさ。
残った鞘を見つめる。
少ししてそれを燃え上がる炎に投げ込んだ・・幾ら英雄の鞘でも燃えカス一つ残らないだろうよ、鞘が無ければ英雄の剣も、ただの【業物】だ、敵国に奪われてもそこまで困らんだろ。
男は振り返り地面に突き刺した赤槍を抜くと静かに前方に目を向ける。
人がゴミの様だ・・・2万の兵・・・凄いな、体中が恐怖で震える。
でも、やっぱり俺は何処かおかしい様だ。
さっきから笑みが止まらない、それなりに今まで剣豪と死合して来たが・・・これ程の湧き上がる衝動は、初めてだ。
男は赤槍を頭上で回転させ、限界まで炎を灯す。
回転を止め、炎を燃やしたまま考える。
こう言う時は、名乗りとか上げた方が良いのだろうか?
まあいいや・・・柄じゃないな、そう言うのは。
それじゃ、行きますかね。
男は走り出す。
彼の横に共に立つ者はいない・・・前にも後ろにも。
今まで副官に、頭がおかしいとか、気が狂ってるとか散々ひどい事を言われてきたが、奴の言う事も間違っていなかった。
まあいいさ、俺は好きなように生きるだけだ。
この最高の素晴らしき人生を。
男が走っていると無数の矢が男を目掛けて飛んできた。
どうやら敵さん、俺を熱烈に歓迎してくれるらしい。
男は前方に赤槍を回転させ敵軍の放った矢を燃やし弾く。
そのまま走り抜けると、長い槍を持った連中が槍を前方に構えいた。
そりゃあ騎馬や突撃してきて勢いが止まらなくなった歩兵なんかに使う物だろうに。
男は突然飛び上がり、上空で敵兵に向かって赤槍で払う、炎が赤槍の払った軌道のまま伸び敵兵に襲い掛かる。
一振りで6人焼き払う・・・後19994人・・・空いた場所に着地、続けざまに赤槍を一回転全方向に焼き尽くす。
槍の刃ではまだ、誰一人斬っていない、敵兵を殺しているのは赤槍の炎だ。
周囲に人の焼ける臭いか散漫する、お世辞にも良い匂いとは言えない、最初の内は気分が悪くなったが、もう慣れちまった。
人は慣れるんだ人を殺す事も何もかも。
もう・・・此処までくると戦うことが楽しいのか、人を殺すことが楽しいのか良く分からない。
炎が赤槍から消えた瞬間、敵兵が押し寄せる、剣を払い突く。
隙を見て回転させ火を灯す、 わざと敵兵の懐に入り、熱さで除け反った所を焼く。
確かに赤槍は凄いけど、気に入らない点が有る。
基本相手を炎で焼き殺すから、刀で人を斬り殺すよりも、人を殺したと言う実感が薄いんだ。
それじゃあ良くない、人を殺す、人に勝利した、人の人生を奪った、何よりも人の絆を断ち斬った、その喜びが罪が罰が半減しちまう気がするんだ!
人を殺す事を楽しむのと、人を斬れる事を喜ぶ事は、何処が違うんだ!
男には衝動が押し寄せていた、久しぶりの感覚、力を欲する、男は馬鹿だった如何すれば力が手に入るのか分からない、人を、剣士を剣豪を殺せば力が手に入る、剣豪を剣士を、人を殺す為に修練を重ねた。
そんな事を本気で思っていた、自分が始めて人をこの手で殺めた時、男の中で何かが変わった。たしかに修練でも力は手に入る、でも・・・それで手に入る力と・・・人を殺す事、剣士と斬り合い、剣豪と死合、生き残ることで手に入る力は何かが違う。何かが、殺した相手の犠牲の上で手に入れた力は、重さが違う気がした。
だから男は剣士を剣豪を欲し続けた。
もし、この2万との戦いに・・・死合に生き残れたら・・・俺の中で何かが変わる気がした。
だが今回は違う・・・男は力などもう本当は欲してなどいない、逃げているだけだ。男の中で隠れている得体の知れない恐怖、それを誤魔化す為に男は必死になって戦っていた。
ただ人を殺している時だけは、力で人をねじ伏せている時だけは、それを勝利と思っている時だけは・・・この恐怖を忘れる事が、いや心の奥底に隠すことが出来た。
燃え盛る炎が次々と敵兵を焼く。
敵兵の殺気が男の体中に突き刺さる。
向けられる殺気が多すぎて、回避の為に上手く利用できない。
見極めるんだ、俺に向かってくる殺気を。
敵が近づけないように炎で焼く、だが男の乱舞の隙間を割って敵兵が男の下に入ってくる。
飛んで火に入る虫(敵兵)は赤槍で始末する。
もっとだ、もっとこの死合にのめり込むんだ、何も考えるな今この時を、この瞬間を楽しむんだ。
【此れが俺の望んだ剣士としての生き様だろ】
俺に取って幸せな一時は過ぎていく。
・・
・・
よし・・・上手く俺の場が作れてきた、予想以上に赤槍で戦えてる、この調子で行けば・・・最も敵兵はまだ腐るほど残っているけどな。
まだ俺自身ほとんど傷は負っていない。
此のまま大将首取ってやる、首を洗って待っててくれ大将・・・今逢いに行くからよ。
男は戦いにのめり込む、何かを隠すために。
ただ、ひたすらに死合に没頭していた。
彼は気付いていなかった、いつの間にか、自分を囲う敵兵が、あからさまに減っている事に。
男は向かってきた敵兵の足を払い、そいつが地面に倒れた処を容赦なく突き刺す。
ふと周囲を見渡す・・・敵兵の数がさっきより大分少ない、かなりの数を赤槍で焼き払ったが。
嫌な予感がした。
何が起こっている・・不意に空を見上げたら見たくない物を見てしまった。
巨大な術式・・・半径50mってとこか?
それが空に浮かんでいた。
よくもまぁ、俺なんかの為に使ってくれたな・・・とても嬉しくないよ。
これ程の術式となると、1年やそこらで組み上げられるような代物じゃあない。
男は走り出す・・・間に合うか。
その時だった・・男の左右より敵兵の矢が大量に放たれる。
さっき突っ込む時は前方のみだったから、そのまま行くことが出来た・・・今回は・・・動けない。
空の術式が輝きを増す。
矢を捌くだけで精一杯だった、くそ! どうすりゃ良い、何か、なにか手は無いか。
術式は待ってはくれない・・・やがて術式より、大小様々な岩が雨のように降り注ぐ。
ヤバイ、ヤバイ、やバイ!やバイ!!やばイ!!!やばい!!!!!
「ぇえい、ままよーーーー!!!!」
岩が降り注いでも、矢は放たれ続ける・・・そのなかで、男は赤槍を頭上で回転させ炎を限界を超える程に灯す。
剛炎は男の頭上で広がり、その炎は矢を焼き払い、岩をも溶かした。
男の両腕には物凄い衝撃が伝わるが岩の直撃だけは免れた。
辺りに砂煙が舞い上がっている。
敵兵は煙が消えるまでは入ってこないようだ・・・矢も放たれていない、正直危なかった。
男は岩の直撃は無かったが矢が背中に刺さっていた、抜いたら血がたくさん出てきた・・・まあいいや。
体を動かしてみる・・・問題は特に無いな、そこまで痛くないし。
男は手に持った赤槍を見る、まだ無理すれば使えるだろうけど・・・此のまま使えば武器として死ぬな。
お前は・・・最後まで付き合う必要はないよ、腕の良い職人なら治してくれるだろ。
今まで世話になった・・・・ありがとう戦友。
そう言うと男は赤槍を地面に突き刺す。
ゆっくりと腰の鞘を握る。
「お前には最後まで付き合って貰うぞ・・・親友」
まだ辺りには砂煙が立っていた。
調度良い・・・男は目を瞑る。
殺気が多すぎて感じ取るのが難しい・・・此れしか【生き残る】方法はない。
兵士は砂煙を眺めていた・・・あの化け物も流石に死んだだろう。
くそ、今回の戦争はもっと楽だって聞いてた、話が違うじゃないか。
だいたい今は収穫の季節で、戦争に無理やり徴集されて・・・早く村に帰りたい・・・もうすぐ女房に子供が生まれるんだ。
兵は妻の顔を思い浮かべる。
この兵は愚かだった・・・まだ戦いは終っていない、男が死んだと確認が出来ていないというのに。
砂煙から突如人影が、その刹那煙の中から化け物が飛び出して来た・・・鞘に剣を締まったまま。
一瞬で兵の懐に入り込む、兵は突然のことで対応できない・・化け物は鞘から抜刀。
なんで?
俺は・・・まだ・・・
こ・ど・・に・・
あえ・・て・・な・・・い
周りの敵兵はなにが起きたのか分からない。突如現れた化け物が一人の兵士の首を跳ねた。
少しの時間差、首から大量の血が噴水の様に飛び散る。
化け物はその返り血を浴び、赤く染まっていた・・表情は瞳孔が開き、口元がニヤケていた。
一言で現す事ができる・・・不気味。
その姿に周囲の兵は顔を引き攣らせる、動揺を通り越し瞬く間に恐怖えと。
奴は人じゃない、血も涙も感情も無い、化け物・・・じゃない・・・人である事を捨てた鬼だ。
恐怖に染まった敵兵は理性を失って鬼に斬り掛かるか、逃げ出すか。
理性を失った兵士に鬼を殺せるわけが無い・・次々に死体が出来上がる。
やっぱり刀は良い人を殺した実感がこの手に伝わってくる・・斬るたびに何かが男に圧し掛かる、
想い、重くて仕方ない・・・でも・・この重さが剣道の果てに・・・きっと俺を導いてくれるはずだ・・・。
男は斬った、斬り続けた・・・ただ一心不乱に。
人の良さそうな髭面の中年を・・未来ある若い青年を。
男は戦った。
もう、この死合いが始まってどれほどの時間が過ぎたのか・・斬っても斬っても次々と敵は沸いてくる。
それは・・・まるで・・・果て無き剣の道のように・・終わりが見えなかった・・・。
その時、一つの言葉が男の脳裏に浮かんだ・・・【狂戦士】
あれ? 俺・・殺す事・・楽しんでいるのか?
俺は狂戦士・・なのか・・・剣士じゃ・・・ないのか?
男は突然、動きが止まった・・・周りの兵が、気味悪そうに男を見つめている。
オッサン・・・俺は剣士じゃ・・ない・・・のか?
一人の兵士が意を決して男に近づく。
狂戦士ってなんだ?
敵兵は恐怖を叫びと共に振り払い男に斬り掛かる。
「嗚呼あぁぁーーー!!!」
男は突然斬られた、地面に転げ落ちる。
何だ!! なにが起こった、背中が熱い・・斬られたのか?
敵兵達の歓喜の叫びと、男への罵倒の声が聞こえる。
「この化け物がーーー!!」
敵兵が男を蹴飛ばす。
「こいつは化け物じゃねぇ!!鬼だ!!」
なんだよ・・こいつら・・人の事、化け物だ、鬼だ・・好き放題言いやがって・・・まてよ・・・狂戦士ってのは鬼や化け物の事なのか?
その間、敵兵の罵声が男に突き刺さり続ける。
もう良いや、化け物でも鬼でも・・狂戦士でも・・・お前らがそんなに望むなら、俺が狂戦士に成ってやる。
男は立ち上がる・・・その姿は血塗れ敵兵の血か、男の赤かもう分からない。
実際にはそんなもの見えていない筈なのに、黒い靄のようなものを纏っているように見えた。
それが何なのかは分からない、兵達の恐怖が見せていたのか。
「・・・今・・・俺を斬った奴は誰だ」
誰一人・・・喋らない・・・喋れない・・・
「・・・誰だと聞いている・・・」
兵達の顔がより一層の恐怖に染まる
「誰も答えないなら・・・全て纏めて斬り殺してやる!!!」
もはや構えなど無い、近くにいる奴から斬り殺す。
単対多の戦の場合・・・刀で突き刺してはいけない。突き刺すと筋肉が締まり刀が抜けなくなる、この場合は本来なら刺した相手を蹴飛ばす事で刃を抜くのだが、如何せん敵が多すぎる。その隙を突いて敵兵が男に斬りかかる。
斬りかかってきた兵を蹴り飛ばす・・・だがその時だった、刀を突き刺していた兵が最後の力を振り絞って男に掴みかかり、最後に声を振り絞る。
「いまだ!!俺ごと斬れーー!!!!」
泣きながら一人の兵士が、男と掴みかかっている兵に、突きを仕掛ける。
その瞬間、男は体を捻り縛りを解き、死にかけの兵を盾にする。
だが・・・・まだ兵達の攻撃は終らなかった、その背後から別の兵が男を斬る。
「ぐゥ!!」
男はまた背中を斬られた・・それでも崩れない。
まだだ・・・まだ!! 倒れない俺は負けない・・・勝つんだ!!
男は斬られても倒れない・・・崩れても立ち上がる・・・何かが男を。
俺を・・・倒れさせない。
次第に男は押されて行く、それでも男は戦い続ける。
殺しても、ころしても沸いてくる。
静かに立ち尽くしていた男の肌に雫が落ちた。
男は・・・ふと、空を見上げる。
「・・・・雨が・・・降りそうだな・・・」
空なんて見上げてるもんだから、斬られちまったよ・・・・【痛いな】。
一人殺したら・・一ヶ所斬られる・・・そんなことの繰り返し。
人を斬るたびに男の背中に何かが重く圧し掛かる・・・押し潰されそうだ。
それでも男は人を斬り続けた・・・肉を斬り骨を断ち、その都度人を殺した罪が、罰が男に圧し掛かる。
先に限界が来たのは・・・男ではなかった。
幾ら術式で固めてあっても・・・元より刃毀れのしやすい刀で数百人斬ったんだ。
・・・親友の亡骸を見る・・・
21年間ありがとな・・・先に行っててくれ・・・すぐ俺も行くから。
雨が降ってきた・・・乾いた大地に血液以外の水分が降り注ぐ。
男は立とうとする・・・立てなかった・・・。
男は四つん這いになり。
笑い出した。
雨がより一層強く降る・・・笑いながら立とうとする・・・雨で濡れた大地に思いっきり倒れてしまう、それでも笑い続ける。
雨の音と笑い声だけが虚しく響き渡る。
何となくその雨は男の涙を隠すように・・・雨は降る。
怖い怖い怖い怖い怖いコワイコワイこわいこわい。
隠していた恐怖か男を支配する。
ずっと・・・この恐怖が何か考えないようにしていた。
でも忘れようとすれば・・する程に考えちまう。
もう・・・失うのは嫌だ。
家路につく子供達を憧れの眼差しで眺めている幼い子がいた。
いつ終るのか分からない旅の子供・・・父と二人・・・・果て無き道を行く。
それでも子には希望があった。其れが何処に在るのか名前すら知らないが、確かに【それ】はこの世界に存在していた。
今は其処に帰れない事を、子供心に何となく気付いていたが、それでも自分には何時かは帰れる場所がある・・・それだけで子供は辛い旅路も耐えられた。
でも子は訊きたかった、そこが何と言う場所なのか、どんな場所なのか・・・父だけがそれを知っていた。
子は訊こうとした・・・訊けなかった。
自分は帰れないんだと悟った。
それでも・・・そこがどんな場所なのか子は知りたかった・・・だから何時か・・・父が教えてくれるその時を待っていた。
父が居なくなって・・・男は知るすべを失った。
ずっと俺にはそんな場所は無いと思って生きてきた。
だけどさ・・・最近思う事があるんだ。
オッサンが
父さんが
【それ】だったんだ。
俺にとって【それ】は場所じゃない。
人だった。
でもよ、所詮・・・人間なんて幻みたいに薄く、脆いんだ。
簡単に俺の前から消えて無くなっちまう。
男は再び立とうとする・・・だけど立てない。
「ははは、お前そう悲しい事を言うな・・・よし、決めたぞ」
「今日から此処がお前の・・・」
あの時の言葉が・・・頭から離れない。
何度も国を捨てようとした・・・その度に、あの言葉が俺を縛り付ける。
敵軍が・・・この城に日々少しずつ近づいてくる事が怖くて堪らなかった。
周りの兵達は近づいたら、また斬られるのではないかと、ただ立とうとする男を眺める事しか出来ないでいた。
俺にこの城を捨てれる・・はずが無い。
やっと手に入れたんだ。
そう簡単に消えてなくならない、俺の居場所を・・・帰る場所を。
俺からそれを・・・奪うというのなら・・・・俺の居場所を土足で踏み荒らすというのなら。
一人でも道連れに・・・地獄へ落としてやる。
男は立っていた・・・それと同時に血が地面に落ちる。
サラシを着付く巻いてよかった。
もう得物はない・・・いや、まだ居た。
背後で一人の兵士が男に問う。
「・・・なぜ・・・そこまでして・・・戦うんだ・・・」
男は振り返ることなく、それに答えると懐から汚いボロボロの短剣を取り出す。
片手で短剣を持ち、もう片方で折れた刀を持った。
相棒、生きているなら返事をしろ・・・もうちょっと付き合え・・・まだ・・・
俺は・・・殺し足りないんだ。
男は再び走り出す・・・そのまま敵軍に飛び込んで行った。
彼の世界は夢のように儚く散る
人の想いは男に重く圧し掛かり
居場所は幻のように去っていく
雨は通り雨だったようだ・・・その後少しして止んだ。
水を吸ってドロドロになった地面に男は倒れていた・・・まだ息はある。
もう立てねぇや。
それでも男は・・・惨めに地べたを這う・・・何かを、誰かを求めるように。
周りの兵士達は、ただ黙って男を眺めていた
・・・どうせこのまま何もしなくても・・・この男は・・・もう。
男はただ、ひたすらに地べたを這いつづける。
それは幻聴なのか・・・それとも。
足音が男に近づく・・・やがてそれは男の隣へ。
声が聞こえる。
『まったく・・・らしくない事をして・・・空から石が落ちてきたではないか』
難だあんた、こんな所にいたのかよ・・・探しちまったじゃないか。
『・・・お前に多くのものを、託してしまった・・・二文字の言葉でお前を縛り付けた・・・・許してくれ』
・・・あ? 何言ってんだ、あんたに託されたもんなんか・・・汚い鞘だけだろ燃やしちまったけどよ。
『そうか・・そう言ってくれるか・・・』
んな事よりよ・・・城に・・・少しでも近づきたいんだ・・・もう頭上げんのも面倒でな・・・このまま進めば近づけるか?
『・・・ああ・・・そのまま行け・・・』
男は少し笑う。
・・・そうかい。
男は再び動き始める。
ゆっくりと、ゆっくりと地べたを這う。
もう・・・無理だエライ・・・ここで良いや。
残った力を振り絞って仰向けになる。
空が見える。
なあ・・・馬鹿王子。
『・・・なんだ・・・』
俺はよ・・・戦ったよ。
『・・・そうだな・・・』
戦った・・・戦って、戦って、戦って、たたかって、たたかって、タタカッテ・・・最後に負けちまった。
名も無き声は黙り込む。
沢山殺した・・・・たくさん巻き込んだ・・・・なのによ・・・先が見えないんだ。
進めば進むほど霧が濃くなって前に進めない。
剣道って・・・なんなんだ?
果てなんて・・・在るのか?
『お前は剣士になった事を後悔しているのか?』
この道を歩んだ事に・・・後悔なんて無いさ・・・でもよ、悔しくて堪らない。
俺はあの時のままだ・・・・俺は弱い・・・一人じゃ・・・何も出来やしない。
護ることなんて・・・出来やしない。
俺が人生をかけて欲した、この力じゃ・・・・城一つ護れない。
『一つだけ確かなことが有る・・・鷲はお前に・・・救われた』
「ははは・・・そりゃ・・・よかった・・・はは・・・」
本当に良かった。
・・・なんか・・・
・・・・少し・・・・
・・・疲れた・・・
『もう充分に戦っただろう・・・ここら辺で一度休んだらどうだ』
そう・・・だな・・・今度こそ・・・良い夢・・・みれそうな・・・気がする。
男は空を見ていた・・・雲の隙間から太陽が男を嫌味に照らしていた。
まったく・・・眩しくて・・・まぶしくて・・・・でも・・・・とても・・・・
「・・・・きれ・・・・・い・・・・・・・だ・・・・・」
目蓋が・・重くなってきた・・ ・ ・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
・・・
・
時が・・・かなりの時が流れた・・・戦争は終わり、また多くの戦争が始まり、また終る・・・それでも人は繁栄を極めた。
この男の物語は有名な話になった・・・平和を生きる平民たちの娯楽の一つ芝居や、映画等の商売として。
最後まで国の為に戦った忠義の者、一人ボロボロになりながらも前王との友情の為に戦った男。
悲劇の英雄として大幅な美化のもと残った、男の所業はすべて闇に葬られ、綺麗な美談として。
この物語は彼の名前から取ってこう呼ばれた
【アレク戦記】
時は戻る・・・。
目の前に男が居る・・・自分はこの者を知っていた・・・赤く燃える街の風景が目蓋の裏に焼き付いている。
自分が誰よりも尊敬したあの方を・・・悪略に嵌め・・・殺した・・・逃げ惑う民の声が耳に残って離れない。
この男が・・・こんな事をするような人間とは、どうしても・・・・・思えなかった。
兵卒は問う。
「・・・なぜ・・・そこまでして・・・戦うんだ・・・」
アレクは振り向くこともなく。
「・・・何の為って・・・んなこと・・・決まってんだろうが・・・」
アレクは誰にも聞こえないように小さな声で
最終話
「・・ただ・・故郷の為に・・」




