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第6話:人質という名のスパイ

「私は、納得がいきません! 戦に勝ったのに、なぜ秀吉と和睦しなければならないんですか。おまけに、私の息子を養子という名の人質に差し出せだなんて!」

家康は、秀吉から届いた和睦の条件を記した書状を叩きつけ憤慨していた。

信長は、陣屏風の裏で勝手に家康の秘蔵の茶器を弄びながら冷めた声を出した。

「家康、猿は戦で負けて政治で勝とうとしとるんだわ。どえりゃあ賢いやり方だがや。ここで意地を張って戦を続けりゃ、徳川は干上がって終わりだぞ」

「でも、息子をあんな猿のところに送るなんて……!」

「人質じゃにゃあ、スパイだと思やあええんだわ。いいか、今は負けたフリをして猿にたっぷりと恩を売っとけ。貸しを作っとけば、いずれ倍にして返させることができるがや」

「織田さま、あなたは本当に血も涙もないお方だ……」

家康は、泣く泣く次男の於義丸を秀吉のもとへ送り出す決断を下した。

「……分かりましたよ。将来のために今は、泥水をすすります」

「そうだわ、ええ覚悟だわ。だがな家康、猿の本当の恐ろしさは、こんなもんじゃにゃあぞ」

信長の不吉な予言通り、秀吉の次なる接待攻勢が家康の精神を削り始める。

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