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第34話:江戸幕府はじめました
「秀忠に職を譲ったものの、諸大名は未だに大坂の顔色を伺っております。法度を定め、厳しく律すべきでしょうか……」
家康が慎重に草案を練っていると信長がその机をひっくり返し、家康の胸ぐらを掴み上げた。
「法度なんてのはな、おみゃあが嫌いな奴を合法的にハメるための、おみゃあ専用のルールブックだわ! 一文字でも逆らえば家を潰し、一言でも不平を言えば首を跳ねる。おみゃあがこれから書くのは、武士どもの息の根を止める死刑宣告書だわ!」
「それでは、ただの暴君ではありませんか!」
「暴君で結構だがや! おみゃあが仏の顔で法を説き、俺が裏でそいつらの背中を刺してやる。これが徳川の仕組みだわ。いいか、大名どもに一寸の余裕も与えたらいかん。一生、江戸と領地を往復させて金も気力も使い果たさせるんだがや!」
信長は家康の手に無理やり筆を握らせ、真っ赤な朱墨をたっぷりと含ませた。
「ほれ、書け! この国をおみゃあの命令一つで動く巨大なカラクリに変えるんだわ。その仕組みを作った時、初めておみゃあは俺を超えられるんだで」
家康は信長の咆哮に押され、大名を縛り上げる冷徹な法案を次々と書き連ねた。




