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第3話:武田旧領を巡る争い
「織田さま、ようやく三河へ帰れたと思ったのに何ですかこの状況は! 甲斐も信濃も主がいなくなって、北条や上杉がハイエナのように押し寄せてきていますよ!」
家康は、地図を広げて頭を抱えていた。武田を滅ぼしたばかりの領地が、信長の死によって巨大な空白地帯と化していたのだ。
信長は、庭で勝手に獲ってきたキジを焼きながら、煙にむせていた。
「家康、棚からぼた餅が落ちてきたんだわ。おみゃあが拾わんで誰が拾うんだがや。さっさと兵を出して、全部徳川の旗に変えてこい」
「無理ですよ! 兵も民も疲弊しています。これ以上戦えなんて、織田さまは鬼ですか!」
「鬼だわ、それも死んだことになっとるお節介な鬼だ。この領地を獲り損ねたら、おみゃあは一生、尾張と駿河の間に挟まれた小癪な田舎大名で終わるぞ」
「小癪な田舎大名……。うっ、胃が……」
家康は脂汗を流しながら、武田の遺臣たちを必死に口説き落とすべく再び馬に飛び乗った。
「ほら、笑顔で行け。おみゃあのその困り顔は、相手を安心させる最高の武器なんだがや!」
信長の無責任な声に見送られ、家康の泥沼のような領土拡大戦が始まった。




