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第29話:関ヶ原の戦い

「織田さまぁ! 霧で何も見えませんし、小早川秀秋は寝返る気配もありません! やはり私に天下なんて分不相応だったんですぅ!」

関ヶ原の盆地。本陣で家康は、爪を噛みながら椅子をガタガタと揺らして半泣きになっていた。

隣で勝手に兵糧の干し肉を齧っていた信長は、食べかすを家康の顔に吹きかけ、その首筋にキンと冷えた刀の切っ先を押し当てた。

「だまっとりゃあ! おみゃあの情けない顔のせいで、足軽まで震えとるぞ。秀秋が動かんのは、おみゃあの覚悟が足りんからだわ。おい、あの優柔不断な小僧の頭上に鉄砲をぶち込んでやれ!」

「味方を撃てと!? そんな狂気の沙汰、私には……」

「なら、俺が引いてやるわ!」

信長は家康の背後に回ると家康の震える右手を力任せに掴み、前方の松尾山を指差させた。信長の指が家康の指を無理やり屈服させ、軍令の扇を振り下ろさせる。

「放てぇ!」

家康の絶叫と共に自軍への威嚇射撃が轟いた。直後、怯えきった秀秋が雪崩のように山を下り始めた。

「……見たか、家康。恐怖こそが人を動かす唯一の言葉だわ」

霧が晴れ、西軍が瓦解する光景を信長は家康の肩に顎を乗せて愉しげに眺めていた。

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