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第27話:直江状が来た
「織田さま、来ました! 上杉の家老、直江兼続からの返書です。これがもう、実に見事なまでの悪口雑言でして!」
家康は届いた直江状を握りしめ、顔を引きつらせながらもその瞳をギラつかせた。
信長は家康の肩に肘をかけ、書状を覗き込んで鼻で笑った。
「おみゃあ、わざと怒らせるような難癖をつけた甲斐があったにゃあ。謀反の疑いがあるから上洛して釈明しろなんて、武士の意地を逆撫でする天才だがや。この直江って男、おみゃあの狸っぷりを完璧に言い当てとるぞ」
「…… おかげで不届きな上杉を成敗するという、これ以上ない大義名分が手に入りました。これで堂々と軍を動かせるのです……」
「ほうだ。だがな、おみゃあが会津へ向かえば大坂の三成が必ず背後を突く。それもおみゃあの計算だろうが」
信長は、家康の耳元で死神のように囁いた。家康は、己の心の底にある冷徹な脚本を信長に暴かれ思わず身震いした。
「……私は、三成殿を信じたい気持ちも……」
「嘘をつけ、三成が動いた瞬間におみゃあがニヤリと笑うのを俺は楽しみにしておるんだわ」
家康は意を決し、会津征伐の軍令を下した。天下分け目の巨大な罠が静かに、そして確実に閉じようとしていた。




