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第26話:権力の座
「ついに一線を越えてしまいました、秀吉殿の居城であった西の丸へ入るなど……。これではまるで、私が天下を盗もうとしている悪党ではないですか!」
大坂城西の丸。家康は、豪華な部屋の調度品を一つ触るのにも泥棒のように手を震わせていた。
信長は、秀吉が愛用していた黄金の茶碗を勝手に弄びながら家康の鼻先でそれを回した。
「悪党で結構だがや、おみゃあが遠慮しとる間に三成の残党がまた火を噴くぞ。この城の主が誰か天下に知らしめるのがおみゃあの仕事だわ」
「ですが、世間の目が……私はあくまで、秀頼さまの後見人として……」
「なら、その後見人の顔で、猿の座っとった椅子に堂々と座れ! おみゃあが座らんなら、わしが座っておみゃあを地獄へ引きずり込んでやるぞ」
信長に背中を蹴飛ばされるようにして、家康は上座へ座らされた。不思議なことに一度座ってしまえば、その重みと景色が心地よく感じ始める。
「……織田さま、意外としっくりくるものですな」
「ほうだ、権力ちゅうのは座ったもん勝ちだがや。家康、おみゃあの狸の皮がだんだん黄金色に染まってきとるぞ」
家康は、不敵に微笑む信長を見上げ自分の運命がもう戻れない場所まで来たことを確信した。




