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第25話:前田利家の死
「ついに利家殿まで……これで私を叱ってくれる者は、この世に一人もいなくなりました」
前田利家の訃報に家康は、珍しく肩を落とした。だが、その背後に立つ信長は無造作に家康の頭を小突いた。
「しんみりしとる暇があるなら、外を見てみるんだわ。おみゃあが焚きつけた加藤清正たちが今にも石田三成をぶち殺そうと刀の錆を落としとるぞ。どえりゃあ面白い見世物の始まりだがや」
「清正殿たちを焚きつけたのは、私ではありません! 彼らの怒りが勝手に……」
「嘘をつけ。おみゃあが裏で三成は生意気だと吹き込んだんだろうが。おみゃあはもう、その手を汚さずに人を殺す術を覚えとる。俺よりタチが悪いわ」
その夜、三成が命からがら家康の屋敷へ逃げ込んできた。敵対する家康に助けを求める三成の屈辱。信長はその三成の頭を足蹴にする仕草をしながら家康に囁いた。
「ほれ、こいつを助けるフリをして政治の表舞台から放り出せ。三成を生かして帰せば、いずれ大きな戦の火種になる。それこそがおみゃあの望みだがや」
家康は冷や汗を拭いながら、震える三成に優しく微笑みかけた。その背後で魔王が満足げに高笑いしていた。




