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第24話:秀吉の最期、魔王の引継ぎ
「織田さま、もうよしましょう……秀吉殿は、もう話すこともままならぬのです」
慶長三年八月、伏見城。家康は、死の床にある秀吉の傍らで静かに涙を流していた。だが、その背後には漆黒の鎧を纏った信長が抜き身の刀を提げて立っていた。
「バカ猿、おみゃあの作り上げたこの黄金の城、全部俺が燃やしてやろうか? 地獄でまた、俺の草履を温める準備はできとるか?」
信長が秀吉の顔を覗き込むと秀吉は、喉をヒューヒューと鳴らし、誰もいない空間を必死に掻きむしった。
「のぶ……な……さま……お許し……を……」
秀吉の瞳には、家康ではなく自分を断罪に来た魔王の姿しか映っていない。
「家康、おみゃあにこいつの呪いをすべて譲ってやる。猿の死骸を乗り越えて、おみゃあがわしを超える魔王になるんだわ。ほれ、こいつの手を取れ」
信長に促され、家康が秀吉の手を握ると秀吉は、最後の一息で「秀頼を……」と絞り出し絶命した。その瞬間、信長が家康の肩を強く掴んだ。
「さあ、おみゃあの時代の始まりだがや。この死臭のする部屋から早う出て天下を掴みに行くんだわ」
家康は冷たくなった秀吉の手を離し、ゆっくりと立ち上がった。その顔からは、もはや迷いは消え失せているようにみえた。




