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第21話:信長に睨まれた秀吉
「織田さま、伏見の城が……秀吉殿の夢が崩れていきます!」
深夜の大地震、家康は埃にまみれ庭先で震えていた。そこへ、瓦礫を蹴散らしながら現れた信長が不気味な笑みを浮かべた。
「地面が揺れとるだけじゃにゃあ、猿の命運が揺れとるんだわ。おい、今すぐ猿の寝所へ行くぞ。あいつに魔王が迎えに来たと伝えてやらんといかんにゃあ」
「何を仰る! 秀吉殿は寝込んで起き上がることも出来ずにおられるのですよ!」
家康の制止を無視し信長は、倒壊した奥御殿へズカズカと踏み込んだ。
そこには、豪華な寝具の上で震える老いた秀吉がいた。家康の目の前で信長は秀吉の枕元に座り込み、その耳元で「猿、地獄へ行く準備はできとるか?」と怒鳴った。秀吉はカッと目を見開いて「織田……様……?」と喉を鳴らして失禁した。
「……織田さま、やりすぎです。秀吉殿は、本気で怯えていますよ……」
家康は秀吉を介抱しながら信長を睨んだ。だが信長は冷たく言い放つ。
「地震より怖いのは、わしの呪いだわ。家康、おみゃあが俺を裏切らんように猿が壊れていく様を特等席で見せたるわ」
家康は、震える秀吉とそれを愉しむ魔王の間に挟まれ、これから始まる死のプレッシャーに背筋が凍る思いがした。




