第18話:唐入り、肥前名護屋
「織田さま、正気の沙汰ではありません! 秀吉殿は本気で唐の征服を目論み、肥前名護屋に巨大な基地を築かせました。我らも江戸から遥々呼び出され、この地の果てで待機です!」
名護屋城外の陣屋。家康は、海を埋め尽くす軍船の群れを眺めながら胃を抑えて蹲っていた。
信長は、陣屋の鴨居に足をかけてぶら下がり楽しげに水平線を指差した。
「猿はもう、この国の王では満足できんのだわ。だがな、海は広いぞ。あっちにはおみゃあらが知らん化け物がいくらでもおる。おみゃあは絶対にその船に乗るんじゃにゃあぞ」
「乗りたくなくても、秀吉殿が行けと言えばそれまでです!」
家康は信長の助言通り、必死のサボタージュを開始した。秀吉が陣を訪ねてくるたび、わざとヨレヨレの服を着て顔を土で汚し普請に追われて疲れ果てた姿を演出した。
「殿下、江戸の開拓が遅れておりまして……私が行けば、関東の民が暴動を起こしましょう」
「……ふん、家康。お主は相変わらず土いじりが好きな男よな」
秀吉は呆れたように笑い、家康を渡海軍のリストから外した。
「……織田さま、また嘘を重ねてしまいました」
「ええがや、その嘘が徳川の兵一万人を救ったんだがや」
信長は満足げに、対岸の朝鮮半島を睨みつけていた。




