第14話:驚愕の一夜城
「織田さま、出ました……出ましたよ! 向こうの山の上に昨日までは、影も形もなかった巨大な城が忽然と現れました!」
小田原城を囲む徳川の陣屋。家康は遠くの山頂にそびえ立つ天守を指差し、腰を抜かさんばかりに驚愕していた。
信長は、家康が持っていた双眼鏡を奪い取るとゆっくりとレンズを覗き込んだ。
「あれは魔法でも何でもにゃあ。あらかじめ木を切り倒さずに城を作って、最後に一気に木をなぎ倒して見せただけだわ。猿らしい悪趣味で見事な手品だがや」
「手品!? でも、北条の者たちはパニックですよ。豊臣は神仏の加護を得たと震え上がっています。戦う前に、心が折れてしまっていますよ!」
家康は、秀吉の人の心を操る天才的な残酷さに背筋が凍るのを感じた。
そこへ、秀吉から「茶でも飲まぬか」と使いが来た。家康が恐る恐る一夜城へ登ると秀吉は、黄金の茶室でニヤニヤと笑っていた。
「家康殿、驚いたか? この城が欲しくなったか?」
「め、滅相もございませぬ。殿下の知略、ただただ感服いたしました……」
家康は、心の中で信長に同意しながら帰路についた。
「織田さま、この男……もしかしたら、あなた様より恐ろしいかもしれません」
「何を甘いことを言っとる、猿にできて俺にできんことはにゃあわ」
信長は、珍しく不機嫌そうに鼻を鳴らした。




