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第12話:大戦の予感
「織田さま、ついに最悪の事態です! 北条が真田の領地をかすめ取りました。秀吉の奴、顔を真っ赤にして小田原を叩き潰すと叫んでいますよ!」
駿府城の一室。家康は、秀吉から届いた過激な書状を振り回しながら部屋の中を右往左往していた。
信長は、家康の頭上で逆さまに浮きながら庭の雀を眺めていた。
「猿は、戦をする理由をずっと探しとったんだわ。北条の阿呆どもがまんまとその罠にハマった、ただそれだけのことだがや」
「他人事だと思って! 私は北条とは親戚同然なんですよ。今から小田原へ飛んでいって、北条氏政の親父殿を説得してこなければ!」
家康は急いで旅支度を始め、着替えの袴を履こうとして足をもつれさせ畳に転がった。
「無駄だわ、北条は自分たちの城に惚れ込んどる。あれは、一度死んでみんと目が覚めん。おみゃあは説得するフリだけして、秀吉に私は尽力しましたという顔を見せとけ」
「……そんな不義理なことができますか!」
「なら、おみゃあも一緒に滅びるか?」
信長の冷たい問いに家康は、袴を握りしめたまま絶句した。
結局、家康は重い足取りで小田原への使者を出したがその心はすでに来たるべき大戦の予感に震えていた。




