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第10話:秀吉への臣従誓約
大坂城の一室。家康は、前夜に秀吉から受けたお願いの内容を信長に報告していた。
「秀吉の奴、わざわざ私の寝所まで来て明日みんなの前で俺の陣羽織をねだってくれと泣きついてきたんですよ。恥も外聞もない男です」
部屋の隅で高級な羊羹を勝手に頬張っていた信長は、口の周りを汚したまま鼻で笑った。
「猿はそういう小細工が何より大好きなんだわ。だがな、ただ羽織を貰うだけじゃ面白くにゃあ。貰った瞬間にその場で袖を通して、これは重い! 天下の重みだ!って叫んで派手にひっくり返ってみせろ」
「はあ!? なんでそんな余計な芝居を!」
「天下人の重圧に驚く徳川っちゅう演出だわ。おみゃあが阿呆になればなるほど、猿は喜び周囲は油断する。徳川の牙はそうやって隠すんだがや」
翌日の会見。家康は言われた通りに腰を抜かし、秀吉をこれ以上ないほど悦ばせた。
「……織田さま、家臣たちの目が冷たすぎて死にたくなりましたよ」
「それでええ。おみゃあは今日、世界一幸せなピエロになったんだわ」
家康の胃がキリキリと鳴る中、信長はすでに次の舞台である小田原を睨んでいた。




