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死体の山で蝿に囲まれていた少女は、“蝿の王女”と呼ばれながら人間になることを学んでいる  作者: ベルモット
第3章 使われる力

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追跡者

 夜の空気は、すでに変わっていた。


 外へ出た瞬間、ミリアはそれを察する。

 風の流れが途切れ、周囲の気配が不自然に分断されている。


 囲まれている。


 数は、先ほどより確実に多い。


 タケトシも同時に理解したらしい。

 足を止めず、進む方向だけをわずかに変える。


「走る」


 短く告げた。


 ミリアは従う。

 判断を迷う余地はなかった。


 背後で足音が重なる。

 訓練された者の動き。


 だが、どこか揃っていない。


 統率ではなく、別の意思で動いているような不気味さがあった。


 建物の影を縫うように走る。


 ミリアは速度を落とさない。

 それでも、心の奥に違和感が広がる。


 逃げている。


 島では、逃げたことはなかった。


 常に、追う側だった。


 背後で銃声が響く。


 地面が弾ける。


 狙いは正確だ。


 ただの追手ではない。


「左だ」


 タケトシが声を上げる。


 ミリアは反射的に方向を変えた。

 次の瞬間、弾丸が直前までいた空間を貫く。


 速い。


 判断がわずかに遅れていれば、当たっていた。


 呼吸が乱れる。


 恐怖ではない。


 戦いの計算が、通用しない。


 島とは違う。


 相手は逃がさない前提で動いている。


 前方の闇が動いた。


 人影。


 だが距離の詰まり方が異常に速い。


 跳躍。


 瞬間的に間合いが消える。


 ミリアは腕で受けた。


 衝撃が骨に響く。


 強い。


 これまでの追手とは、明らかに違う。


 その影はすぐに距離を取る。


 顔は見えない。


 だが、感情だけが伝わる。


 楽しんでいる。


 戦いを。


 ミリアの動きを。


 タケトシが銃を向ける。


 撃たない。


 撃てない。


 相手の位置が定まらない。


「……なんだ、あれは」


 初めての困惑だった。


 ミリアは答えない。


 ただ理解する。


 これは普通の敵ではない。


 そして、島で感じた何かに近い。


 遠くで笑うような感覚が走る。


 声ではない。


 空気のわずかな歪み。


 次の瞬間、その存在は消えていた。


 だが追手たちは止まらない。


 包囲は、さらに狭まっていく。

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