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死体の山で蝿に囲まれていた少女は、“蝿の王女”と呼ばれながら人間になることを学んでいる  作者: ベルモット
第3章 使われる力

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崩れる包囲

 再び銃声が響いた。


 弾丸がコンクリートを削り、白い粉が空中に散る。ミリアは影の中で身体を低くした。弾道を見て、次の動きを読む。


 銃を撃っているのは三人。


 距離はそれぞれ違う。


 だが、呼吸が揃っていない。


 連携が甘い。


 ミリアは一歩踏み出す。


 次の瞬間、倉庫の影から飛び出した。


 銃口がこちらへ向く。


 しかし、遅い。


 ミリアは男の腕を払い、身体を回す。そのまま肩を引き、体重を乗せて投げた。


 男の身体が地面に叩きつけられる。


 息が止まったような音がした。


 残り二人が距離を取る。


「下がるな!」


 ひとりが叫ぶ。


 だが声には焦りが滲んでいた。


 ミリアはゆっくりと立ち上がる。


 銃を拾う気はない。


 必要ない。


 男たちは互いに視線を交わす。


 予定と違う。


 そう顔に書いてあった。


 ひとりが通信機に手を伸ばす。


「こちら――」


 言葉が途中で止まる。


 ミリアが距離を詰めていた。


 腕を取る。


 通信機が落ちる。


 男は慌てて銃を向けた。


 ミリアは身体をひねる。銃声が耳の横をかすめた。


 次の瞬間、肘が男の胸に入る。


 男が後ろへ倒れた。


 残りは一人。


 男は数歩下がり、銃を構え直す。


 指が震えていた。


「……化け物」


 小さく呟く。


 ミリアは答えない。


 ただ静かに立っている。


 胸の奥で、さっきの感覚が少し強くなっていた。


 血の匂い。


 戦いの音。


 遠い記憶が、ほんの少しだけ浮かび上がる。


 男は引き金を引いた。


 銃声。


 ミリアは身体を横へずらす。


 弾は壁に当たり、火花が散った。


 距離は、もう近い。


 ミリアは踏み込む。


 拳が男の腹に入る。


 空気が抜ける音がした。


 男は膝から崩れる。


 倉庫街に、急に静けさが戻った。


 風の音だけが残る。


 ミリアは立ったまま、呼吸を整える。


 胸の奥のざわつきが、ゆっくりと静まっていく。


 そのとき。


 タケトシが近づいてきた。


「……早いな」


 ミリアは肩を軽く動かす。


「終わった」


 タケトシは倒れている男たちを見る。


 しばらく黙ったままだった。


 そして小さく言う。


「様子がおかしい」


「灰鐘?」


「ああ」


 タケトシは通信機を拾う。


 画面を確認する。


「部隊が少なすぎる」


 ミリアの視線が動く。


「……どういうこと?」


 タケトシは少しだけ考え、それから周囲を見る。


 倉庫の影。


 高い壁。


 遠くの屋根。


「様子見かもしれない」


 その言葉の意味を、ミリアはすぐ理解した。


 これは本隊ではない。


 ただの確認。


 試し。


 つまり。


 誰かが見ている。


 ミリアは静かに周囲を見る。


 風が吹く。


 だが、人の姿はない。


 それでも。


 どこかから視線を感じた。


 遠くで、何かが動いたような気がした。


 ミリアはその方向を見る。


 だが、そこには誰もいなかった。

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