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死体の山で蝿に囲まれていた少女は、“蝿の王女”と呼ばれながら人間になることを学んでいる  作者: ベルモット
第3章 使われる力

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静かなる任務

午後になって、タケトシが机の上に資料を置いた。


「任務だ」


ミリアは顔を上げる。


書類の上には簡単な地図と写真が並んでいた。


倉庫街。


港に近い区域だ。


「違法取引の仲介役。今夜動く可能性が高い」


タケトシは淡々と説明する。


「捕縛?」


「そうだ。今回は排除じゃない」


ミリアは小さく頷いた。


排除ではない。


つまり、壊さない。


それはむしろ楽だった。


準備はすぐに終わる。


――――――


日が落ちるころ、二人は倉庫街へ向かった。


海風が強い。


鉄の匂いと油の匂いが混じり、空気が重い。


人通りは少ない。


街灯の光が倉庫の壁に長い影を落としている。


「目標はこの通りを使う」


タケトシが低く言う。


ミリアは周囲を見回す。


暗い。だが視界は悪くない。


むしろ、静かすぎる。


少し離れた場所で足を止める。


待つ。


時間はゆっくり流れる。


遠くで船の汽笛が鳴った。


そのとき。


背中の奥が、わずかに反応する。


ミリアの視線が動く。


倉庫の屋根。


暗闇。


何もない。


それでも、あの感覚は消えない。


見られている。


昨日と同じ。


「どうした」


タケトシが小さく聞く。


「……何でもない」


嘘だった。


だが、説明できるものではない。


気配ではない。


音でもない。


ただ、視線。


誰かが、どこかから見ている。


ミリアはゆっくり息を吐く。


任務に集中する。


――――――


通りの向こうから男が歩いてくる。


写真の人物と一致していた。


距離が縮まる。


ミリアは静かに踏み出す。


音を殺し、影の中を進む。


三歩。


二歩。


そして、あと一歩。


その瞬間。


背中に走る感覚が、少しだけ強くなる。


まるで――


観察されているような視線。


ミリアは男の腕を取り、そのまま地面に押さえ込んだ。


動きは一瞬だった。


男は抵抗するが、すぐに力を失う。


「終わりだ」


タケトシが拘束具を取り出す。


任務は成功だった。


それでも。


ミリアはもう一度、屋根の上を見る。


暗闇は静かなままだ。


何も見えない。


けれど。


確かに、誰かがいた気がした。

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