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死体の山で蝿に囲まれていた少女は、“蝿の王女”と呼ばれながら人間になることを学んでいる  作者: ベルモット
第3章 使われる力

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観察する者

夜の屋上は風が強かった。


街の灯りが遠く滲み、下では車の流れが絶えず続いている。


双眼鏡を下ろし、視線の先をもう一度確かめる。


白い建物の三階。薄く灯った窓の光。


昨日、紙を置いた場所だ。


室内では二人が動いている。


男は机の前で淡々と資料を整理し、少女は窓際に立つ時間が長い。


以前のように外を避ける仕草はない。外を測るように、静かに視線を置いている。


双眼鏡を再び構える。


少女が窓の外を見る。


距離は十分にある。それでも、わずかに背筋が張る瞬間がある。


感覚は鈍っていない。


紙に記した一文を思い出す。


――揺れは、小さい。


あれは感想ではない。事実の記録だ。


境界に立ったまま、踏み外さずにいる。


双眼鏡を下ろす。


風が頬を打つ。


焦る必要はない。


距離を保ったまま、少しずつ近づけばいい。


やがて少女は、はっきりとこちらを意識する。そのときの目を見たい。


ポケットから端末を取り出し、短い文を打ち込む。


――接触は、まだ。


送信して間もなく、了承の一文が返る。


それだけで十分だった。


屋上の縁から一歩離れる。


三階の窓は、まだ光っている。


観察は続く。


今は、それで足りる。

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