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守る側の一瞬
扉を開ける。
地下の空気は冷たい。
男は椅子に縛られたまま、こちらを見る。
「何だ」
言い終わる前に、上階で爆ぜる音がした。
床が震える。
壁の粉が落ちる。
男の目が細くなる。
「来たな」
私は答えない。
階段の上で足音が弾ける。
速い。迷いがない。
私は男の前に立つ。
扉が蹴り開けられる。
黒い影が二つ。
銃を構えている。
撃ってくる。
私は踏み込む。
肩がわずかに遅れる。
弾が壁を抉る。
熱が走る。
止まらない。
一人目の腕を払う。
銃口が逸れる。
肘を打つ。
体が崩れる。
だが、折らない。
二人目が距離を取る。
再装填。
私は間に入る。
撃たせない。
低く踏み込み、足を払う。
男が転ぶ。
銃が滑る。
私は蹴り飛ばす。
肩が鈍く疼く。
それでも動く。
立ち上がろうとする影の喉元に、私は膝を押し当てた。
「動くな」
私の声は低い。
影は止まる。
背後で縛られた男が笑う。
「守る側か」
私は振り向かない。
階段の上で、さらに足音がする。
まだ来る。
私は位置を変える。
扉と男の間に立つ。
肩が熱い。
だが、足は動く。
階段の影が揺れる。
私は息を整える。
今度は、遅れない。




