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狙われる側
夜は静かだった。
拠点の灯りは最小限に落とされている。
私は廊下を歩く。
足音が、わずかに響く。
地下の部屋は閉じられている。
男はまだ中だ。
不意に、外から小さな衝撃音がした。
止まる。
風ではない。
金属が擦れる音。
私は窓のそばに寄る。
暗闇の向こうに、動きがある。
ひとつではない。
複数。
背中が、固くなる。
扉が開く。
タケトシだ。
「気づいたか」
「はい」
彼は外を見る。
「早いな」
低い声。
外で足音が走る。
乾いた音が壁に当たる。
探っている。
「狙いは地下だ」
タケトシが言う。
私は頷く。
捕まえた。
だから来る。
それだけだ。
「どう動く」
命令ではない。
問いだ。
私は考える。
迎え撃つか。
守るか。
逃がすか。
迷う時間はない。
「地下を優先します」
自然に出た。
タケトシは頷く。
「行け」
私は走る。
足音を抑え、階段を下る。
外で衝撃音が増える。
金属が軋む。
時間は長くない。
扉の前に立つ。
中には男。
捕らえたはずの存在。
私は、迷わず扉を開けた。




