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死体の山で蝿に囲まれていた少女は、“蝿の王女”と呼ばれながら人間になることを学んでいる  作者: ベルモット
第3章 使われる力

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残った言葉

 男は地下の部屋に移された。


 拘束されたまま椅子に座っている。

 私は壁際に立つ。


 関わる必要はない。

 それでも残っている。


「話せ」


 タケトシが言う。


 男は笑う。


「俺だけ捕まえても無駄だ」


 視線が私に向く。


「鬼を使う組織は目立つ」


 部屋の空気がわずかに変わる。


 私は動かない。


「噂は広がってる」


 男は続ける。


「生かすか殺すか曖昧なやつがいるって」


 胸の奥が冷える。


「便利だよな」


 小さく笑う。


「線引きが曖昧だ」


 タケトシは表情を変えない。


「続けろ」


 低い声。


「お前は駒だ」


 男が言う。


「選ばせてもらってると思うな」


 言葉が残る。


 私は息を吐く。

 否定しない。


「外は動いてる」


 男は視線を外す。


「俺を捕まえた時点でな」


 タケトシが一歩近づく。


「誰が動く」


 男は答えない。

 代わりに笑う。


「鬼を使う側は狙われる」


 静かな声だった。


 部屋が重くなる。


 私は、初めてタケトシを見る。


 彼は男を見ている。

 感情は読めない。


「ここで終わりだ」


 短い言葉。


 男は黙る。


 私は部屋を出る。


 廊下は静かだ。


 捕まえたはずなのに、

 何かが広がっている。


 肩の傷はもう熱くない。


 だが、あの言葉は残っている。


 選ばせてもらってると思うな。


 私は足を止める。


 本当に、選べているのか。


 それとも、誰かの都合に合わせて動いているだけか。

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