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孤島で“鬼”になった少女は、文明世界で人の心を取り戻す ――Princess of the Flies――  作者: ベルモット
第2章 役に立つ力

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準備

 翌朝、早くに目が覚めた。


 外はまだ静かだ。廊下の音もない。いつもより少し早い時間なのに、体は起きていた。


 考えないようにしていたはずなのに、考えていた。


 部屋を出る。


 食堂の前を通り過ぎて、外に出た。空気が冷たい。息を吐くと、白くなる。


 建物の裏手に回ると、タケトシがいた。


 壁に背を預けて、荷を点検している。私の足音に気づいて、顔を上げた。


「早いな」


 それだけ言う。


 私は、立ち止まる。


「……行くんですか」


 タケトシは、手を止めなかった。


「準備はする」


 それは、答えでも命令でもなかった。


 私は、近づく。


 荷の中身を見る。最低限の装備。多くはない。必要なものだけが入っている。


「一人分じゃないですね」


 タケトシは、短く頷いた。


「二人分だ」


 それ以上は言わない。


 私は、何も聞かなかった。


 少し離れたところで、別の人たちが動いている気配がする。声は聞こえない。準備だけが進んでいる。


 それは、出発ではなかった。


 決まった場合に備えた、準備だった。


 タケトシは、荷を持ち上げる。


 重そうだった。


 私は、反射的に手を伸ばした。


「……半分、持ちます」


 タケトシは、私を見た。


 一瞬だけ。


「いい」


 短く言って、荷を持ち替える。


 私が持ちやすい位置に、静かに寄せてきた。


 私は、受け取る。


 重みが、腕に伝わる。


 そのまま、何も言わずに並んで歩き出す。


 目的地は、まだ決まっていない。


 でも、準備は始まっている。


 タケトシは、前を歩く。


 私より半歩だけ、前だ。


 振り返らない。


 でも、置いていかれない距離だった。


 私は、その背中を見て歩いた。


 言葉は少ない。


 それでも。


 この人は、最初から私に決断を押しつけるつもりはなかった。


 それだけは、分かった。

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