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そして、愛おしさが残った
人生の幕を下ろす前に
残しておくことなど
私には何もない
そして、愛おしさが残った
私は旅人ではない
歩いても
歩いても
進みはしない
今日もまた時が私を追い越していった
遠い過去に
命を燃やして愛し合い
そして息が尽きるほど憎みあい
今残るのは
ただ愛おしさだけ
私の人生は
それほど悪くない
それでもふと
記憶の奥で
ひとつの灯が
消えずに揺れている
時間は残酷で
優しく
痛みを薄れさせ
ほんの少しだけ匂いを残す
私は赦しなど欲しない
生きたあかしも要らない