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3/3

最後はあんまりエロくなかった

もっとエロく出来るよなどの建設的なお便りお待ちしてます




「──これは、違う!」


正樹は突き動かされるように身を起こし、 静かにミオの身体を抱き上げ、位置を入れ替える。


ミオは抵抗もせず、ただ静かに受け入れた。 その顔には、どこか遠くを見ているような、無機質な笑みが浮かんでいる。


正樹はその瞳に呼びかけるように、懸命に言葉を紡いだ。


「……ミオ、俺を見ろ……!  俺たち、いま……命を紡いでるんだぞ……!」


返事はない。 それでも、ミオを包むようにしながら、正樹は動き出した。


それは洗練とは程遠く、 美しさのかけらもない、ぎこちない動きだった。


しかし、想いだけは真っ直ぐだった。


それは神事としての舞ではない。 ただただ、正樹という一人の男が、 大切な女性に想いを届けようとする、必死な動き。


──原初の舞。


祈りという言葉すらまだ存在しなかった時代、 ただ人が人を抱き、未来を願った頃のような、 粗く、熱く、魂のままに重ね合う所作。


周囲の空気が震えた。 神の清浄とは異なる、生々しい温度。 見守るサポート巫女が、胸元を押さえ、ぽつりと呟いた。


「御子様の舞……。胸が、締め付けられます……」


正樹はなおも揺さぶるように呼びかけ続ける。


「ミオ……!  お前との……子どもが欲しいんだ!!」


その声が空間を満たした瞬間、 目に見えぬ“神の気配”がふっと抜けるように、空へと流れていく。


ミオの瞳が、揺れた。 ぼんやりと曇っていた意識が、正樹を捉えはじめる。 そして、小さく、しかし確かに、唇が震える。


「……正樹様……わ、わたしも……子どもが……欲しい……っ」


その微笑は、どこまでも人間らしかった。 涙が溢れ、震えるまつ毛が濡れる。 けれどその頬には確かな温度があり、 その声には、命を願う人の祈りが宿っていた。


もはや神の気配はどこにもない。 ここにあるのは、ただ二人の人間の、 命を紡ごうとする真っすぐな想いだけ。

正樹の額からこぼれた汗が、ミオの胸元へと落ちる。

歯を食いしばり、必死な形相で舞う。

「正樹様…頑張って………」

神に捧げる舞ではない。誰にも誇れない、不格好な動き。 ただ、目の前の彼女のために汗を降らす。


正樹とミオは再び向き合い、 互いを信じるように、祈るように、結び合った。


「──ミオっ……子どもを作るぞ!」


「……はいっ!!」


交差する想いが、ふたたび高まり、 熱と光がひとつの頂へと達したその瞬間、


静かに、荘厳に、 原初の神事が、完成した。



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