饅頭が怖い勇者とぎゃふんと言わせたい魔王のラブコメ?
闇の城の玉座に座る魔王は、手元の情報を見つめて不敵な笑みを浮かべた。彼が手にしたのは、勇者の弱点に関する極秘情報だった。
「これは裏から仕入れた極秘情報なんだが……奴は饅頭が弱点らしい……」
魔王は椅子の肘掛けをトントンと指で叩きながら、データを確認する。
「嫌と言うほど饅頭を食らわせてやろう……フフフ……ヤツが怖がる顔が目に浮かぶ。覚悟して待っていろ勇者!」
魔王はすぐに分析を開始し、勇者の行動パターンを計算した後、最も効果的なタイミングで攻撃を仕掛けることに決めた。遠距離から饅頭弾を撃ち出す魔導砲を設置し、狙いを定める。
「フハハハハハ……!!!さあ食らえ、勇者よ!」
しかし、勇者は饅頭を見つめると、目を輝かせながらゆっくりと口を開いた。
「あ~こわいな~やられちゃうな~」
……むしゃむしゃ。
魔王は愕然とした。勇者は饅頭を手に取ると、嬉しそうに食べ始めたではないか。
「やつめ!!!な~にが『あ~こわいな~やられちゃうな~』だっ!!!」
魔王は拳を握りしめ、悔しさに歯ぎしりした。
「覚えてろよ!次は絶対ぎゃふんと言わせてやるからな!」
そこへ新たな情報が舞い込む。
「……何?!いちご大福が怖いらしい?」
魔王の目が怪しく光った。
「いい情報を聞いたぞ!待っていろ勇者!予約困難店の限定10個のやつを食らわせてやるからな!」
魔王はデータベースを検索し、最も入手困難ないちご大福を探し出した。そして、遠距離から魔導砲で投下する作戦を実行した。しかし、勇者はまたもや幸せそうにそれを食べてしまった。
「……まさか、また騙されたのか?」
しかし、魔王の執念は止まらなかった。次なる情報を得た彼は、静かに微笑む。
「なに?!結婚指輪が怖いらしい?」
魔王はデータに基づき、最適な作戦を立てた。
「待っていろ勇者!絶対に左手の薬指に結婚指輪をはめてやるからな!」
そして——
気がつけば、目の前には荘厳な教会の祭壇。白いベールをまとい、純白のウェディングドレスに身を包んだ自分が立っている。
「……あれぇ……?!」
魔王は混乱しながらも、勇者の隣にいることに気づく。勇者は優しく微笑みながら、そっと手を握ってきた。
「僕のそばにいるのが一番怖いかも」
魔王は茫然としながら、それでもどこか満ち足りた気持ちで呟いた。
「……病める時も、健やかなるときも……」
勇者は照れながらも、穏やかに微笑んで言う。
「幸せ過ぎて怖いよ」