第3話
「こ、こいつら……みんな死んでる……!」
私は死体の一つに近づき、その体を裏返して詳しく調べた。案の定、服装はまるで映画で見るような中世風のデザインだった。粗末な布で作られたフード付きのローブ。そして手には短刀。直感的に、この短刀には何かヤバいものが仕込まれている気がした。毒でも塗られているんだろうか?
「あなた、本当に暗殺者じゃないの?」
少女も立ち上がり、私の隣に来て別の死体を調べ始めた。
「違うよ。」
「じゃあ、なぜ暗殺者を助けたの?」
「ここに来たばかりで何も知らなかったからね。ただ、君が彼を殺そうとしてるのを見て、つい手を出しちゃっただけ。」
「……本当に余計なお世話ね。」
「へへっ。」
私は話題を変えることにした。「ここって、一体どこなの?」
「ここはサドゥヤ共和国。グランビア族の村に近い場所だわ。」
聞き慣れない地名ばかりを聞かされて、妙な既視感に襲われた。でも念のために、ちょっと控えめにもう一度尋ねてみる。
「……それで、東京はどのあたりに?」
「とう……きょう……?ごめんなさい、知らないわ。」
やっぱり、ここは異世界かよ!
一瞬で移動したかと思ったら、まさか異世界に飛ばされてるなんて。そういえば、あのとき大型トラックに轢かれそうになって、危機一髪で体が勝手に瞬間移動したんだっけ。でも、だからって異世界に来るとは予想外すぎる。
そう思っていたら、ふと別の疑問が浮かんできた。
「ところでさ、なんで私の言葉が通じるわけ?」
少女は『まさか、それも分からないの?』という顔をした。「たとえ他国から来たとしても、知らないなんてありえないわよ。」
私は答えず、ただ苦笑を浮かべるだけだった。
「はあ、仕方ないわね。」少女は少し間を置いて続けた。「およそ百年前のことよ。世界がしばしば戦乱に陥るのは、人々が言葉の壁に阻まれて誤解が生じるからだと、一部の大魔法使いたちが考えたの。そして彼らは力を尽くして、この世界全体に『翻訳魔法』をかけたのよ。これで、固有名詞以外のすべての言語が自動的に翻訳されるようになったの。」
「それで、世界は平和になったの?」
「いいえ。」
今度は少女が苦笑した。
「この世界に大きな影響を与えた出来事の一つだから、知らない人なんていないわ。」
「そ、そうか……」
少女はふと私の服に目を留めた。
「それより、あなたの服装、本当に変わっているわね。太腿や腕がこんなに露出しているし、生地は上質で軽やか。でも、娼婦には見えない。」
「私は正真正銘の普通の女子高生だってば!」
「ジョシ……コウセイ?それは何?」
「えっと……私の国では、特有の身分というか職業みたいなものかな。」
「あなたが……?」
彼女に頭からつま先までジロジロと見られて、正直いい気はしなかった。でも、別にやましいことは何もないから、堂々としていた。ただ、スカートのスリットから下着が見えてないかだけは少し気になったけど。
「まあいいわ、あなたもついて来なさい。」
「私の名前は正連未曉。未曉でいいよ。君は?」
「未曉……正連はあなたの姓かしら?」
「そうだよ。何か問題でも?」
「正連家の未曉ね、覚えておくわ。私はディルナよ。」