新しい恋へ
それから何度かビルドが訪ねてきたが、会わずに追い返した。
手紙も届いたが、適当に処理した。
最後の方は泣き言の連続だったが、それも無視。
フィーナがジョセフに送った手紙を読んで、ジョセフが屋敷にとある噂を流してくれた。そのためか数日後から紹介状もない使用人たちがオーレン家を訪れた。
フィーナは顔をよく知った彼らを迎え入れた。
あたらしい屋敷に案内し、そこをきれいにしてもらう。
季節が回り、別荘に移動した頃には、社交界には噂が広まっていた。
リンツハルト家の大破産。
没落への道。
リンツハルト伯爵の浮気により、離縁された伯爵は、現在慰謝料のため奔走中。
恋人の男爵令嬢は結婚が伸びたことや借金のことがわかって離れていった。
伯爵は孤独に屋敷で戦っている。
らしい。
自業自得だ。と父は言った。
この噂は当分消えないだろう。そして流れるほどに、彼は再婚しにくくなる。
資金援助すると言い出す貴族がいるとしたら、爵位を欲した成金貴族だが、彼らも悪い噂のある人物と娘を結婚させるかは微妙なところだ。
一方のフィーナは、かわいそうな人物として社交界に名が轟いてしまった。
それに関してはフィーナの望むところではなかったが、いいこともあった。
「貴方はなにも悪くない。気にしないで」
口さがない者達の噂話にため息を吐いていたフィーナに話しかけてきたのは、とある貴族の子息だった。
キリッとした風貌はビルドとは正反対。正義感が強く。平民の生活改善を目指す実業家でもあり、非常に優秀な人物。
彼はフィーナを遠乗りや劇場などに連れて行ってくれた。
そうして1年後。彼からフィーナは婚約してほしいと言われたのだ。
彼は王都には住んでおらず、近々王都に拠点となる家を借りて、事業を王都で行う予定だという。
フィーナはそれならうちの別荘を使えばいいと誘った。
2人が結婚するのは、それからすぐのことだった。
恋も知らなかったフィーナだが、結婚してわかれてからこんなことがあるなんて。
――人生何があるかわからないものね。




