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だまらっしゃい!



「頼む! 離婚してくれ!」

「い・や・で・す! 誰が悲しくて結婚直後に離縁された女になりたいもんですか!」

「でも僕は君を愛してない!」


 ――堂々と言うことか!


 フィーナは頭を抱えたくなった。

 どういうわけか泣き喚く状態から立ち直ったビルドだが、今度は怒鳴り合いが続いていた。


「そもそも結婚する前に言わない貴方が悪いんです!」

「それは説明しただろう! 君を傷つけたくなくて……」

「ええ、ええそうでしょうね! 考えなしですね本当に! 結婚してからいわれるほうがずっと傷付きます!」


 主に経歴が。


「ぼ、僕だって悩んだんだ! でも愛する人がいるのに結婚生活するなんて、酷いこと僕はできない!」

「それは、そうですね! 本当にひどい人ですよ! この大馬鹿!」


 幼馴染なので容赦のないやりとりが続いた。


「ちなみに、聞きますけど」

「なにを」

「もし離婚しなかったら、その男爵令嬢はどうなさるの?」

「いや、離婚する」


 フィーナは歯軋りした。


「だ・か・ら! もししなかったら別れるのかと聞いているの!」

「それはしない! どうしても君が納得できないなら……そうだな……彼女にも我が家で暮らしてもらって、君は例えば別荘に行ってもらうとか」


 ぶちりと何かが切れる音がした。


「妻を追いやって愛人屋敷に住まわせる紳士がどこにいるー!!!」


 フィーナの雷、ここに落ちる。

 流石に怯えた様子でビルドが縮み上がった。


「だ、だから離婚を……」

「まだ言うか!」


 と怒鳴りはしたが、けれどフィーナも馬鹿ではない。

 このままでは早晩彼の言う通り、フィーナは別荘に追いやられそうである。

 仮にこのまま住むとしても、愛人と同居など最悪だ。伯爵であるビルドに出ていけとも言えない。となると、一番はやはり離婚することだ。

 経歴に傷はつく。

 それは本当に回避したかったが、しかし死ぬまでそんな生活をしていくことも勘弁願いたい。


「わかりました」

「わかってくれた!?」

「とりあえず、お父様に報告します」

「それは困るけど」

「だまらっしゃい!」

「はい!」


 フィーナは頭を押さえる。頭痛がしてきそうだった。


「とにかくお父様に相談はします。でも、離縁ということなら、私から言い出したことにします」

「うん。それはいいよ」


 ケロッとビルドは言う。

 フィーナは半眼でビルドを睨んでいたが、ニコニコと嬉しそうな彼に何を言っても無駄に思えて、結局脱力するに至った。


 ――なんてやつと結婚してしまったの、私……。







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