結果は確認しないといけません 3
今話はちょっと横道に逸れた話です。
「女神エルメール、お前の噂は聞いている。新人の中でも飛び抜けて優秀な女神とな」
なんと意外なことに私は噂になるほど優秀とのことです。
私は出来ることを出来るだけ頑張っていただけ、なんですけどね。
「つい先日もレアケースの対応をこなして見せたようだな。赤子の対応などベテランの対応領域だからな。だが1つ聞こう、何故赤子を転生させなかった?転生かどうかは選べるとしても基本的に女神は転生を薦めなければいけない事を忘れた訳ではあるまい。何故だ」
楽しそうに話していた表情が一転して、凄んだ顔をして問いつける局長に対して私はあの時思ったことを正直に喋ります。
「それでは赤子の魂が保たない可能性がありました。局長も知っているはずです。産まれたばかりの赤子の魂は弱まる事を」
「確かにそうだが完全に崩壊する訳でも無い。魂が保った状態で転生出来る可能性もあった筈だ。赤子だって短い人生だった事を悔やんでやり直したい筈だ」
「それでも魂の消滅の可能性が高かったあの子には天界で魂を療養することが最善だと思います」
「女神の鉄則『転生を薦める事』を忘れたのか?判断能力の低い赤子には女神が直々に転生させることを選ぶのが最善とは思わないのか?」
「思いません。あの子が消滅する危険を冒してまで転生させる訳にはいきません。たとえ女神の鉄則を持ち出されようとも」
たとえ、貴女に強制させられたとしても。
その言葉を紡ぐ前に私たちの間に一瞬の静寂が生まれました。
チラリと隣を見てみるとラポーメスタスさんが青い顔をして固まっていますが、今は心配してる余裕はありません。
お互いに次の言葉を出さないまま膠着状態になっています。
しかし譲れません。譲る気はありません。
「くっ、くわっはっはっはっはっは!まさかここまでの頑固者だったとは。確かにお前は優秀だ。信念を貫き通す意地は優秀な女神に備わっているからな」
お褒めの言葉ありがとうございます。
ですが、いきなりの対立に驚きましたよ…。
「ああ、すまない。お前の判断は間違っている訳ではない。ただ、新人がレアケースを対処出来たということに疑念を抱いてな。試させてもらった」
どうやら局長に試されていたようですね。
「では私はお眼鏡に適いましたか?」
「ああ、もちろんだ。試すような真似をしてすまない。女神エルメール」
いえいえ。もし謝るなら隣で青い顔をしている先輩にもお願いします。
「エルメール、貴女いきなり何を!局長相手に喧嘩を売ったのは夢か何かかと思いましたよ!」
息を吹き返しましたか。心配していたんですよ?
だから顔を近づけて怒らないでくださいよ。
ちょっ、ちょっと怖いです。局長よりも怖いですよ。
「その辺にしておけ。ラポーメスタス。試したのは私なのだ。彼女に非はない」
そうですよ!私悪くありません。
「いいえ!この子の友神としてしっかりと言い付けます!2度とこのような無礼を働かないようにしっかりと!」
「そ、そうか。なら仕方ないな」
え、局長何引き攣った顔して納得しようとしているんですか?
私の擁護はしてくれないのですか!?
ちょっ、あーーー!!
ヘルプミー!
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あのあとじっくり折檻を受けたので今日は、もう帰っていいですか?
「それでは本題に入ろう」
…そういえばまだでしたね。今日呼ばれた理由の"業務変更"ついては。
「今回エルメールには転生が完了した魂たちの現状確認に行ってもらいたい」
意外にもまともな業務に変更のようですね。
地獄に出向とか事務仕事の山とかかと思っていましたよ。
「ん?ちなみにそれって私の担当だけ…ですよね?担当外は含まれないですよね?」
「いいや、お前の担当外も含む」
待ってくださいよー。
いくら新人とはいえ私の仕事10年分の転生量でも大変なのに流石にこれ以上は無理ですよ。
「ふっ、もちろん全部ではないさ。正確に言うならばここ3年間の特定惑星領域内に転生した魂の現状確認だ」
あれ?意外と少ないかもですね。
3年ならまぁ何とかなりますかね。
「エルメール、惑星が数多ありたった3年分とは言えこの天界で転生の対応に当たっている女神の分もとなると決して少なくありませんよ」
ラポーメスタスさんの忠告で目が覚めました。
そんなに多いなんてやだー、もしかして初めての残業になったりします?
「安心しろ。1日で終わらせてこいとは言わん。3日間やろう。それに加えて終わった時点で残りの期間は好きに過ごしていいぞ。諸々の経費も出そう」
「それだけですか?」
なんかこの交渉押せばいけるような気がしますね。
強気でgogo!頑張れ私!
「む、なら1日の特別休暇で手を打たないか?」
「やりましょう」
「欲張りすぎですよ…」
やったー!先輩の声が祝福にしか聞こえませんね!
呆れ?否、きっと褒めてくれているんですよー。