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紫陽花橋  作者: 三咲
1/8

雨の日の巡り会い

タイトルは某大人数アイドルグループのメンバーのソロデビュー曲から来ています。

切ない恋物語綺麗に書けたらと思ってます。

 ここは江戸。商人達の活気溢れる賑やかな街。そこに1人の街娘が住んでいた。名は鈴乃 18才の呉服屋の娘だ。鈴乃の家がやってる呉服屋は裕福な顧客が多く、武家からの以来も多い。

 水無月も半ばに差し掛かった頃、鈴乃は武家屋敷へと向かって歩いていた。武家の娘から振り袖を頼まれており、届けに行く途中だ。道中紫陽花の花が咲き誇る橋へと差し掛かかる。ちょうどその時だった。

 空から雨の雫が降りそそぐ。この梅雨の時期で天気は変わりやすい。雫はだんだん強くなり雨は本降りになる。振り袖は風呂敷で包んであるから無事ではあるが鈴乃の頭上には容赦なく冷たい雨が降り注ぐ

「どうしよう?とにかく屋根のあるところを探さなきゃ。」

足早に橋を渡ろうとすると低くも甘い声の主に声をかけられる。

「お嬢さん」

振り向くとそこには見目麗しい男が紫色の蛇の目傘をさし立っていた。

「どちらへ行かれる?」

そう言って鈴乃に傘を差し出す。

(江戸の男にしては丁寧な言葉使いで身のこなしもいいわ。)

「お武家様のお屋敷に。そちらの娘さんから振り袖を頼まれていまして。」 

「俺と向かう方向は同じだ。途中まで共に行こう。雨に濡れては風邪をひいてしまう。」

その男は鈴乃を傘に入れ歩き出す。


鈴乃は歩きながら隣にいる男を見つめた。

(端正な横顔。男なのにこれだけ美しい人がいるのか)

鈴乃は息を飲む。

「どうした?俺の顔に何かついてるか?」

「いえ」

鈴乃は頬を赤く染め視線をそらす。



しばらくして2人はとある芝居小屋の前に差し掛かる。男はそこで立ち止まる。

「俺はここで失礼する。その傘持っていきなさい。」

男は芝居小屋の裏口へと向かった。

「あの、お名前教えて頂けませんか?」

鈴乃は慌てて訪ねる。

「蔵之助。」

蔵之助は名前を告げると裏口から入っていった。

(蔵之助様というのね。役者さんかしら?今度お礼をしなくちゃ)




武家屋敷に到着すると女中が1人娘の部屋へ通してくれた。

「鈴乃ちゃん、待っていたわ」

「百合子様、頼まれてた振り袖お持ちしたわ。」

この武家屋敷に住む1人娘は百合子という。

百合子は鈴乃より2つ年上。品物を届けに行くたび鈴乃によくしてくれる。

「鈴乃ちゃん、どうかしら?」

百合子は振り袖を羽織てみる。色は赤地に桃の花が咲いている。鈴乃の店で一番人気の品だ。

「これ今度うちで開かれる夜会で着るの。わたくしの許嫁も来るの。」

「気に入ってもらえると嬉しいですね。」

「鈴乃ちゃんはいい人いないの?」

鈴乃は今日ここに来る途中で紫陽花の咲く橋で出会った人のことを思い出した。

「蔵之助様という方なんです。芝居小屋に入っていかれました。」

「蔵之助?その方一座の役者さんだわ。2枚目だってもっぱらの噂よ。」

(やっぱりそうだったんだ。) 



鈴乃はお屋敷を後にした。雨はもう上がっていた。

(この傘蔵之助様に返さなきゃ)

紫の蛇の目傘を手に途中芝居小屋に寄ろうと思った。

江戸時代はまだまだ勉強中です。

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