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最期のキセキを貴方に  作者: 絢無晴蘿
第二章 『聖女に処刑された少女は、魔王と歩む』
22/28

鬼籍のあなたは1.5

前話「鬼籍のあなたは」の最後に入るエピソードを入れ忘れていたことがわかりました。

次話と話が繋がらなくなるため、一度投稿して、数日後に前話と合体させる予定です。

申し訳ありませんが、今日は前話の抜けたエピソードと今日投稿する分を連続で二話分投稿します。



 ニアラ様とお話しした後、レギナルド様の元に赴く。ノックをして入ると、そこには予想外の人たちがいた。

 一巡目の世界では今常緑の森に居るはずのない二人……ジスラン王子とアシル。アシルの転移で来たのか、護衛もいない。

 目を白黒させているうちに、レギナルド様は告げた。


「わかった。聖女について、話そうか」


 歩きながら、レギナルド様は今までの事を少しずつ説明していった。

 聖女が偽物とすり替わったこと、それを私が救助したこと、そして、その救助された聖女を保護していること。しかし、二巡目であることは説明せず、ある程度の説明が終わるころには聖女様のいる部屋の前に着いていた。

 ノックをすると、聖女様の声が聞こえる。


「ジスラン、様?」


 部屋に入ると、聖女様の驚いた声が響いた。


「よかった、無事で……」


 ジスラン様が、とても優しい眼差しで聖女様を見ながら言葉ををかける。心配そうな声で、ジスラン様が聖女様を大切にしていることが分かった。


「な、なぜジスラン様がここに……」


 レギナルド様が連れてきたと思ったのか、ジスラン様とレギナルド様の顔を行ったり来たりと見ている。


「……こちらの動きに、気付いたようだ」

「あの偽物はまだ気付いてはいないので、安心してください」

「そうだったのですね……」


 少しほっとしたような、複雑な表情だった。


「さて、これからのことを相談しないとですね」


 そう、ジスラン様は話し出す。

 今までの話をまとめ――


「私の死を偽装しましょう」


 そう、言った。



「ジ、ジスにいっ?!」


 思わずアシルが驚きの声を上げた。


「そうだな。このままではジスラン王子は殺される可能性が高い」

「そ、そんな……」


 レギナルド王の言葉に、アシルは肩を落とした。


「アシル」

「ジス兄……本当に、」



「え、えぇっ???」

「一巡目の世界では君は殺されなかったが、今回は事情が変わっている」


 アシルの顔がどんどん青くなっている。


「転移の魔術を使えるだけでも疑われるだろうね……いや、アシルの前にアリアナ嬢と大神官様か」


 ジスラン様の言葉に、アシルははっとした様子で考え込む。

 アリアナの名前を聞いて正気に戻ったのだろう。


「アリアナも……」


 あの日のことが蘇る。

『あぁ、シャノン。私、貴女に伝え忘れてしまったことがあるの』

 少し気分が悪くなってしまい、思わず一度目を閉じた。


「私は死の偽装をするとして、他の人達に被害が及ぶ前に、短期で解決した方が良さそうですね」


 ジスラン王子の言葉にレギナルド王も頷いた。

 エリカ様は少し複雑そう様子だった。だが、特に言うこともなく頷く。


「やるならば、一ヶ月……いや、あと二週間だ」


 レギナルド王が突如そう言った。


「二週間後? 二週間後になにかありましたか?」

「えっと、偽の聖女様が学園に行きたがって……学園に来た前後だと思います」


 過去の事を思い出しながら、ジスラン王子に答える。

 その頃、アシルが忙しくなって、幽霊騒ぎもあった。

 そういえば、ネイロ様の事をどうするのだろうかとレギナルド様を見ると、ちょうど目が合った。


「ネイロのことは心配するな」

「は、はい」


 考えていたことをすぐに当てられて、私は顔に出ていたかと少し恥ずかしくなった。

 そんな私のことを置いておいて、レギナルド様は話を続ける。


「今、ミラに偽聖女への対応のため動いて貰っている」

「ミラ様が……?」


 そういえば、この城に来てから初日にミラ様を見てから姿を見ていない。


「最短でも二週間は必用だろう」

「わかりました。その前に偽聖女が動いてしまったらどうしますか」


 ジスラン様とレギナルド様の話が進んでいく。時折エリカ様が助言をしたり、アシルが戸惑いながらも話は進む。私も時々一巡目の話を問われたりするが、ほぼ話を聞くことしかできなかった。

 レギナルド様、ジスラン様のように権力を持っているわけでも参謀に長けているわけでもない。アシルのような魔術を使えるわけでもない。


 エリカ様を助けられた。ジスラン様が真相に気付いてきてくれた。レギナルド様も理解し動いている。一巡目の世界とは明らかに変わっている。


 けれど、この先私はあと何ができるだろうか。


 何もできない自分にこれ以上何ができるか分からなかった。





「シャノン! あの時の怪我は大丈夫なのか? いや……それよりも、おかえりだな」


 兄様の声が響く。

 複雑そうな父様と心配する兄様が、家に帰ると出迎えた。


 あれから、しばらくは私は普通の生活を行なうことになった。

 ジスラン様の死の偽装や偽聖女に抵抗する為の水面下の動きはレギナルド様達で行なう。私にはできないことばかりだし、このまま学園を休み続けることで疑われてもいけないので、学園に通うためにだ。


 兄様はまだ何も知らされていない。父様は、少しだけレギナルド様から知らされているらしい。

 今、この国が大変な状況に陥りつつあることを。そして、私がレギナルド様に協力することになったことも。

 だからだろう。


「おかえり、シャノン」


 そう言った声は、心配しつつもなぜ私なのか、困惑と様々な感情が入り交じった物だ。

 ただ、今は……。


「ただいま、父様、兄様」


 そう、言えたことが嬉しかった。

 まだ、偽聖女は存在しているし、私はもうなにもできない、けれど。


 思わず二人に抱きつくと、温かかった。






 日常に戻って来た。


 いつものように学園に通い、授業を受ける。

 聖女様の降臨という一大事があったので皆そわそわとしていたが、それでもある程度平穏に過ぎていく。


 そして、遂にジスラン様が『死んだ』。

 前回のような不審火はエリカ様の救出によって無くなったうえに、一巡目の世界とは違い死因もはっきりしている。

 聖女様の降臨した事を考え、魔王の封印の地を極秘裏に調査していた際の事故だった。


 そういうことになっている。


 実際は、ジスラン様とアシル、信頼の置ける者達とエルフ達が協力して遺体を偽造して事故死を演出したらしい。

 私は後からアシル達から教えて貰った。


 すでに、大神官様とアリアナ達には根回しがされているらしい。

 アリアナは一巡目の世界同様、聖女様の世話役なので忙しくて私は聖女様降臨から会えていない。


「ねぇ、知ってる?」

「なになに」

「最近、街で人が消えるんだって」

「なにそれ。家出とかじゃないの?」

「でも、一日に何人もだよ? あまりにもおかしいんじゃないかって」

「へー……」

「信じてないでしょ」

「それよりさ、この前――」


 日常が戻って来た。けれど、こんなすぐに割れてしまいそうな薄氷のようなうわべだけの日常が。







「彼等は、どうするかしら?」


 薄暗い部屋で、聖女と呼ばれる少女は嗤った。

 聖女エリカとそっくりでいて、しかしその表情は、纏う気配は、全く違う異質なモノだった。


 最近の悩みは、少女のやることなすことがことごとく邪魔が入ること。

 だが、それが誰の仕業かなんとなく予想は付いていた。


 『彼等』……ジスラン王子とエルフ達だ。

 元々、ジスラン王子は聖女エリカと特に親しかった。そのため、隙を見て殺すつもりだったが先を越されて姿をくらました。彼一人でできるものではないが、彼の部下達はほとんど洗脳済み。他の王族や貴族達は気付いている様子はない。なら、ジスラン王子が誰かと協力している可能性が高い。

 消去法で、エルフ達が候補に挙がる。

 おそらく、ジスラン王子がエルフに助けを求めたのだろう。


 邪魔ばかり入って、やらなければならないことができていない。

 このままでは、当初の予定だった大神官やアリアナを殺すことも阻止されるだろう。

 ゆっくりとこの国を乗っ取っていく予定だったが、もうそんな悠長なことはしていられない。


「……このままじゃ、終わらせない」


 廊下で、物音がした。すぐに扉が叩かれて声がする。


「聖女様、お時間です」

「……今、行きますわ」


 聖女のような笑みを顔に張り付かせ、少女は歩き出した。



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