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女子レスラーがVRMMOに入場だあああっっ!平和を賭けて魔王に挑戦するまでのビクトリーロード?  作者: 灰ちゃ
第1章 電脳世界で再デビュー? どうなる、どうする、元チャンピオンの私?
8/11

第8試合 まさか……出会っちゃいました

 ゲーム2日目。


 昨晩、終了(ログアウト)した宿の個室で目を覚まして、まずは身体が思い通りに動くかを確かめるためのストレッチ運動を30分ほど。

 この個室は二階なので、あまりドタバタする運動をすると部屋を追い出されてしまうかもしれない、と宿を取った時に説明されたので。

 本格的なストレッチは街の外へ出てからにする。


「うん、問題ない……というか、レベルやスキルが上がると身体を動かす感覚が結構変わるんだね……」


 実はこれがかなり厄介なのだ。

 運動神経、とよく言われるモノを大体二つに区別すると、反射神経と行動の最適化に分けられる。

 反射神経はレベルやスキルが上がることで何のリスクもなく強化されていく。

 一方で、行動の最適化というのはマニュアルではなくその時その時のコンディションや疲労、士気などにより精神面でも変わってくる。

 

 ただでさえ最適化を手探りするのは大変なのに、レベルやスキルが変化する頻度が昨日のようだと、また攻撃を空振るような無様な真似を晒してしまうのが怖い。

 今はリングの上じゃなく、ただのゲームだとは頭では理解していても、全部を納得出来るほどに単純ではないのだ。


「今日はモンスターと戦ってみたいね。プロレスが果たしてモンスターに通用するのか……早く試してみたいよ」


 そのためにもまずはモンスターとの戦闘だ。

 宿屋を出ると、何故か私をどこからか見ている視線を感じながらも、モンスターと戦闘出来る場所の情報を集めようと街の出入り口に立つ番兵さんに話しかけてみる。

 何度も何度も戦闘(スパーリング)を繰り返して私なりの最適解を見つけ出さないと。

 

「モンスターと戦いたいのかい?それならこっちじゃなく反対側の街の西側の出入り口から出て、少しばかり歩くと見えてくる『始まりの森』がお勧めだよ」


 この世界には人間が操作するプレイヤーばかりではなく、ゲーム内でAIが管理、操作するNPC(ノンプレイヤーキャラ)も存在している。

 昔のゲームだと「ここは〇〇村だよ」というようにあらかじめプログラムされている台詞以外は話さなかったらしいが。

 このゲームでは人間が管理しているか、AIが管理しているか程度の違いでしかないのだ。


「ありがとね番兵さん。これは情報のお礼だよ」


 寧ろ、昨日のような無礼な坊や(プレイヤー)よりは好感が持てる。

 だから素直に余裕のある財布から情報料(チップ)を払っていく。

 日本で生活しているとあまりチップを払う、なんて機会には恵まれなかったので一度やってみたかったのだ。

 すると、その情報料(チップ)を素直に受け取った番兵さんはまだ何か話してくれた。


「いいかいドワーフのお嬢さんてこれは情報料(チップ)のついでだ。あそこの森には初心者向けモンスターしか基本(・・)いないが、鳥が逃げていく音と鳴き声がしたら……それは森の主が登場する前触れだ。とっとと森を出たほうがいい」

助言(アドバイス)ありがとうございますっ」


 追加の助言までしてくれた番兵に一礼して、教えてもらった反対側の出入り口へと駆け出していく。

 それと、宿屋を出た頃からずっと背後から感じていた私への視線を確かめるために。


 真っ直ぐに目的地へと向かわずに、建物の曲がり角を曲がったところで〈体術〉スキルを駆使して通路の脇にある樽や箱に飛び乗り、屋根へと一気に駆け上がる。

 そのまま私は屋根の上から、今来た道を覗いていると一人のローブを被った女の子が走ってきてキョロキョロと周囲を見ていた。

 

 ……こりゃ確定だね。


 私は屋根から降りてその女の子の背後に回り込み、彼女の肩をポンポンと叩く。


「ねえ君、なんか私をずっと見てるけど……何か用件でもあるのかな?」

「ひゃああああああああああああああッ⁉︎」

「うわああぁッ?び、ビックリしたああ……」


 その女の子が振り向いて私の顔を見るなり、とんでもない音量の絶叫を上げてきたので。

 それに釣られて私も驚きの声を上げてしまった。ああ、恥ずかしい。

 しかし、その女の子はその後私と一切目を合わせることなく俯いたまま、モジモジとした態度を取るため、埒が開かなくなった私から話しかける。


「……えーっと、別に私を背後からドスン!と狙おうとしてたわけじゃ……」

「そんな!滅相もないっ!……あの……間違っていたら本当に申し訳ないんですが……プロレスリング・NEOの如月遼さんじゃないですか……?」


 え。

 何でこの女の子……私の正体を見抜いたの?

 説明書やスキル説明を何度も読んだけど、キャラクターの外見や能力値(ステータス)から、遊んでいる人間の正体がバレるような要素やスキルはなかったのに……

 

「……何で、そう思ったのか聞いてもいい?」

「え?昨日、絡まれていた男のプレイヤーと戦闘してた時に使った技……あれってキラサギスペシャルですよね?わたしっ、何度も大好きな如月選手の試合を観に行ったことあるから、あの手首の掴み方、そしてブリッジの角度……間違いありませんっ!」


 ……あちゃー、まさかプレイヤーに私のファンがいて、しかもあの戦闘を見られていたとはね。

 しかし、この技は色々と派生技があるのに、細かいところをよく見てるなあ、この女の子。

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