第4試合 売られた喧嘩は買ってやる
ホントこちらは不定期更新で申し訳ありません
一瞬目の前が眩しく光り出し、さすがに目を開けていられないほどの強い光量だったので慌てて目を瞑った。
そして目を開くとそこは先ほどまでの何もない空間ではなく、噴水のある石畳の広場というか公園のような場所だった。
「……凄っ、ホントにゲームの世界で私が生きてるみたい……今の技術ってここまで進んでるだ……」
目の前で自分の腕や指を動かしてるみたり、その場で跳ねてみるが、現実世界となんら違和感はない。
いや、正直に言えばジャンプの高さや動きがもったりとした感じがしたが、よく見ると脚の長さが短いのに気づき。
自分がドワーフを選んだのを思い出す。
少しばかり自分の身体の動きになれておいたほうがいいと思い、道場での練習メニューを一通りその場で始めてみることにした。
まずは受け身の練習を。
しばらくすると、通りかかった鎧を着込んだ男性に声を掛けられ、
「おたく新しく始めたばかりの人?ここは街の中だから、あまりドタバタ暴れてると迷惑行為で通報されちゃうから気をつけなよ」
「あ、ありがとうございます」
危ない、危ない。
公園みたいに見えたけど、街の中だったんだね。
そりゃ街の真ん中で受け身の練習なんかやってたら現実世界でも警官に注意は受けるだろうし。
それでは……と、とりあえず街の外に出てから練習を再開する。
まずは筋肉を解すストレッチを念入りに行い、地面に向かって色々な方向から倒れていき受け身を何度も何度も繰り返す。
すると、目の前の空間に何か四角の窓が現れ、
『フェブラの〈体術〉が2に上昇しました』
「おお……ビックリしたあ!……ふーん、練習でスキルのレベルが上がるのかー。ならゲームの世界でも練習って重要なんだね」
ゲーム世界であらためて練習の重要性を理解して、受け身の後にスクワット300回とシャトルラン10本、それを5セットして休憩する。
最近のレスラーの練習は全員が一緒のメニューではなく、どの筋肉を鍛えるか、レスラーの方向性でメニューを個人に合わせて作るのが常識的になってきている。
空中殺法を使う私は、瞬発力や足腰をメインに技を空振って自爆した時の受け身を重点的に練習メニューを組んである。
休憩も筋肉を休める重要な練習だ。
と、木の幹を背もたれにして地面に尻をついて休憩していると、先程からこちらの様子チラチラと眺めていた男らが近づいてくると、
「おい!女のくせにドワーフなんてゲテモノ種族選んでんじゃねえよ!」
「おい、それにコイツ武器も持たずに戦うつもりだぜ?なあアンタ、武器は装備しないと使えませんよー?わかるかなー?」
……ウザい。果てしなくウザい。
早く私の前から消えてくれないかな、と煽り文句を無視していると。
男たちは徐々にイラつき始め、
「テメェ無視してんじゃねえぞ!女だからって可愛くねぇドワーフ相手なら実力行使に出てもいいんだぜ?」
「やるか?やっちまうか?まあこんな糞キャラPKしたって心が痛まないしな!」
「寧ろキャラ作成やり直させるキッカケになるんじゃね?優しいなあ俺ら、ヘヘへ」
と、武器を構えて私を取り囲んでくる。
現実世界ではレスラーが一般人に喧嘩を売られても、無闇に乗せられないよう自制する必要があったが、ここはゲーム世界だ。
向こうから売ってきた喧嘩は買ってやろう。
そろそろスパーリングもしたかったところだし、実戦形式でこのゲームでの戦い方を模索したかったので渡りに船だ。
「上等だよ、相手になってやるよ先輩方」
それに先輩を倒して世代交代はレスラーの日常茶飯事だ。
ゲーム世界に来て初日だが、早速先輩超えの機会に恵まれるとは私も幸運だと思う。
武器を構えて威勢だけはいい連中にクイクイと指を揃えて挑発を入れる。
「さあ、かかってきな、坊や」