第1試合 燃え尽き症候群
とりあえず話のネタを思いついたので、さわりの部分だけ書いておきます。こちらは多分に不定期投稿となります。
私の名前は安達涼風。
26歳女性。職業、女子プロレスラー。
とある古豪の女子プロレス団体ではメインを張れるくらいは名前の知れた選手だったと自負していた。
レスラー名「如月遼」、二つ名の「天翔るタイガー」「無冠の猛虎」でググればすぐに検索出来る程度には有名だったと思う。
だが、日々の興行で蓄積された身体のダメージ。
特に4年前の首の骨折の後遺症で試合で首を攻撃されるたびに指先の痺れが酷くなり。病院で精密検査を受けたところ骨折時に骨の破片が神経を圧迫し、このままレスラーを続けたら生命の危険があると言われ。
つい先日、引退興行を終えて会社の寮からタワマンの一室に引越しして暇になったばかりだった。
会社からは、レスラーは続けられなくても選手のサポートや事務員など色々な進路を提供されたが、全部丁重にお断りした。
というのも。
中学を卒業してからこの団体の入団試験を合格し、下積みの練習生から若手時代、そしてトップの証であるチャンピオンベルトを腰に巻くまで。
実に10年間、がむしゃらに頂点しか見ていなかった私は、振り返ってみれば女子レスラーの生き方しか知らなかった事にその時は愕然とした。
だからレスラーを引退した時は自分の好きなこと、やりたかったことを見つけてみよう、そう決心していたのだ。
幸いにも趣味がない上に免許も取得していないために車やバイクも買わず、レスラー時代は社宅が用意されていた。
なのでファイトマネーや大きな大会の賞金などが丸々貯金し放置していたので、一、二年くらいは働かなくてもタワマンの部屋の家賃を支払いながら食べていける蓄えはある。
引越したばかりなのでほとんどの荷物は段ボールから出していないが、部屋着や食器など、生活に必要最低限なものだけを取り出してベットに寝転がり。
リビングの40型テレビをオンにし、ボーッと画面に流れるCMを眺めていた。
「でも……私は、何したらいいんだろ?」
根本的な悩み。
それは、まだ何をしようか見当すらついていなかった事。いい加減ボーッと過ごすのも飽きた。
私はふと、小学生の時にクラスの友達と当時有名だったテレビゲームの話題を毎日のようにしていた事を思い出していた。あの時は、やれ村のどこそこにこんな宝箱があったとか、やれボスの弱点は◯◯属性だとか、たわいも無いことで盛り上がっていたなあ……
するとちょうどテレビ画面にとあるCMが流れているのが目に留まる。
『……あなたも剣と魔法の冒険ファンタジー世界を肌で感じて見ませんか?フルダイブVRMMOラグシアオンラインRPG。現在第二陣の参加プレイヤーを絶賛募集中です!』
……ゲーム、かあ。
ホント、小学生の頃遊んだっきりだから楽しめるのかどうか不安だけど。ゲームだから引き篭もるにはちょうどいいのかも。
少しワクワクしてきた。
早速手元のスマホから検索して、購入をポチッと触れてみる。思い立ったら吉日だ。