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【18】悪夢

 本日は2分割です。後半は8時過ぎごろに。

 ……さん。


 ――レス、さん。


「ウォーレスさん、もう、いつまで寝てるんですか」


 そんな声に目を覚ますと、俺はうすぼんやりとした頭のまま周りを見回す。

 だだっ広い平原の片隅、大きな木の陰。眠っていた俺の傍らに座って困ったような顔をしていたのは、ラーイールだった。


「……ああ、悪い。寝過ごしたか……」


「もー、全然起きないから心配しちゃいました」


「は、はは……」


 そう答えながら俺は彼女の顔をじっと見て、妙な違和感に気付く。

 俺は――彼女たちは、俺を置いて旅立ってしまったのではなかったか?

 そんなことを考えて。それから目の前のラーイールをしげしげと見つめていると、彼女は少し困惑気味に頬を赤くしてもじもじし始めた。


「……あの、ウォーレスさん? 私の顔になにかついてますか……?」


「ああ、悪い……。いや、変な夢を見てさ」


「ゆめ?」


「ああ。……嫌な、夢だった」


 そう言って苦笑しながら、俺は体を起こそうとして。

 けれど――動かなかった。


「……え?」


「夢、ですか。それってもしかして」


「ウォーレス殿が、俺たちを騙していた件ですかな」


 いつの間にか後ろに立っていたゴウライが、普段からはまるで想像もつかないような無感動な顔でこちらを見下ろしていて。


「うそつき」


 ぽつりと呟いたのは、ルイン。そしてラーイールもまた、悲しげな、あるいは恨めしげな……見たこともない表情を浮かべて口を開く。


「ずっと私たちを、騙していたんですね。ひどいです」


「……待ってくれ、ラーイール。俺は……」


 そう叫んで、俺は腕を伸ばそうとして。

 けれどそんな俺の目の前に、抜身の剣の切っ先が向けられていた。

 それを握りしめていたのは――


「エレン……」


「何も言わないで」


 冷たい声音でそう言うと、彼女は動けない俺を疎ましげに見下ろして、


「……あんたみたいな役立たず、いらない。もう私たちの前に、顔も見せないで」


 一方的な宣告だけを残し、踵を返して歩き去ってゆく。

 そんな彼女に、皆に、俺は手を伸ばそうとして。

 だけれど体は動かずに、意識はゆっくりと、重だるい沼の中へと引きずり込まれてゆく。

 待ってくれ。

 待ってくれ、皆。俺は――

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