【11】追放者ギルド<2>
「追放者、ギルド……?」
オウム返しに呟く俺に、ノルド氏は大きく頷いてみせる。
「昨今は冒険者さんがたもなかなか景気が悪いですからね。役に立たない、気に入らないパーティメンバーは追放して少人数でやっていこうと考える方々も、悲しいことに少なくない。うちに登録している冒険者さんがたは、そんな世情のあおりを受けて追放された方々なんですよ」
「なるほど……」
そういえばあの宿屋の娘も「最近は追放ブーム」とか不穏なことを言っていたような気もする。思ったより世の中は殺伐としているらしい。
「そうなると、あのチンピラみたいな局員もそうなのか」
「ええ。彼らは優秀な冒険者だったのですが、ふたりとも『見た目が三下っぽい』というだけの理由でパーティから追放されたようで」
それはわりとそうだな……と思ったが、口が裂けても言えない。
「ちなみにかく言う私も、追放された身でして」
「そうなのか。意外だな」
外見だけでもその隆々とした筋肉はかなり鍛えられたものと分かるし、見た目は強面だがこうして話している限りでは温厚で良い人物だ。
一体なぜ、追放されたのだろうか。
「妻と子と一緒に冒険者稼業を営んでいたのですが、妻に間男ができて家を追放されまして……。ギルドの賃金も、子供の養育費として毎月送らないといけないんですよ」
「重い」
そんな乾いた笑顔で言われるとなおさら辛さが身にしみてくるからやめてくれ。
心持ち先ほどまでよりも疲れた顔になりながら、「そんなことより」とノルド氏。そんなハードな身の上を「そんなこと」で片付けないでほしいものだった。
「何にせよ、そういうわけでこのギルドは追放者ばかりが集まっているギルドなわけです。なのでむしろ、ウォーレスさんが追放者であるというなら丁度いい――と言っては失礼かもしれませんが」
「いや、気にしないでくれ。実際そういう話なら、俺も肩身が狭くならずに済みそうだ。……けどよ」
「なんでしょう」
首を傾げるノルド氏に、俺は続ける。
「…………俺が言えた義理じゃあないが、そもそも追放者が集まってるから評判が下がってるんじゃないのか?」
「…………」
俺の告げたそんな言葉に、ノルド氏は首を傾げたままの状態で数秒ほど沈黙し。
「……そういうわけなので、我々としてはウォーレスさんをぜひとも歓迎したいと考えているわけです。いかがでしょうか」
華麗にスルーすると、そう言って俺に手を差し出してきた。
そんな彼を見ながら、俺は考える。
俺の頭にこびりついていたのは、エレンたちのこと。今の俺ならば、彼女たちに追いついて、また一緒に戦うことだってできるのではないか。
今度は足手まといではなく、ちゃんと肩を並べて。
そう考えて、しかし――
『話しかけないで』
最後に聞いたエレンの冷たい言葉が、脳裏をよぎる。
彼女は俺を、追放した。
きっと――彼女のパーティには必要ない存在だと知ったから。いや、それだけではないかもしれない。
なにせ俺はずっと、彼女たちに秘密を抱えたまま一緒にいたのだ。
そんな奴と一緒に旅を続けるなんて、そんなのは誰だって、嫌に決まっている。
俺は、追放されるべくして追放されたのだ。ならば。
「……分かった。よろしく頼むよ、局長代理」
ため息交じりにそう答えて、俺はノルド氏とがっしりと握手を交わす。
追放者ばかりの冒険者ギルド。なんだか胡乱な気配しか感じないが、とはいえ今は先立つものもない状況だ。
それに――こういう場所の方が、かえって気楽に気ままにやれるかもしれない。
他ならぬ勇者本人から追放されたのだ、王から与えられた使命なんてもう関係ない。俺は俺の人生を、のんびりやりたいように生きるだけ。
幸い今の俺には、それを実現するだけの力だってあるのだから。
かくして勇者パーティを追放され、冒険者ギルド・レギンブルク支局の登録冒険者へと鞍替えを果たした俺。
ほんの軽い気持ちで選んだこの道が、どこに続いているのかなんてのは
――今の俺にはまだ、知るよしもなかった。
いやまあ別に、そんなシリアスな話にはならないんだけどな。
本日分割でもうちょいだけ投稿予定です。たぶん19時ごろ。




