①夏の終わり・体調不良
地球には重力と引力がある。
人間は生まれてからずっと、地に足をつけて生活をしている。
ある程度の体積の物質であれば簡単に持ち上げることだって出来るし、オリンピック選手の様に鍛えぬいた肉体があれば、鉄の塊だって放り投げる事だってできる。
しかしミスズは今、夜の闇に包まれた部屋の中――シングルベッドの上で押し潰されるような圧倒的な重力を感じていた。
頭が割れるように痛い。
頭から目の奥、そこから神経で繋がれた身体が痛みで強張っている。
内臓がグルグルと掻き回されているようで、気持ち悪い。腹の奥からこみあげてくるものを宥めるように、何度も唾を飲み込んだ。
幼いころから、疲れが溜まるとひどい頭痛に悩まされることが多かった。
夕方の十七時を回った頃、ミスズは職場にいた。関東を中心に展開しているアパレル会社の東京本社で働くミスズは、同僚達と十二月にあるイベントの打ち合わせをしていた。
この時から既に、身体が不調を訴えていた。
二十時過ぎ、会社出て昼夜を問わず人で溢れている電車に飛び乗る。
九月の未だ消えない熱の残る季節には、まずあり得ない寒気を感じ、ずきずきと痛みはじめた頭に、呼吸が浅くなる。
冷たい汗が背中を伝っていき、この数か月で少し細くなった身体がぶるりと震える。
三十歳を跨いでから体力の衰えを感じて、いろいろと気をつかっているつもりだったが、ここ一週間ほど睡眠時間を削って仕事をしていた。それがいけなかったのだろう。
――明日は、どこにも行かないで寝よう。絶対に寝よう。
幸いなことに、明日は公休の予定だった。
電車を降りてから、重い身体を引きずるように歩き、なんとか二階建てのアパートにたどり着く。
扉に備え付けられたキーパッドにパスワードを打ち込み、鍵を開け中に入る。
玄関に連なって、そこは六畳の簡素なキッチンスペースになっていた。
ミスズは流し台に備え付けられている小さな引き出しを開けた。
たしか鎮痛剤をここにしまっておいたはずだ。
しかし見つけた鎮痛剤の箱の中身は空っぽ。頭痛なんかで死ぬわけじゃない、そう分かっているのに、薬が無かったという小さな絶望が、ミスズの足元をぐらつかせる。
降り積もった疲れを閉じ込めた肉体は、心までも蝕んでいくようだった。
もうこのまま寝てしまおう、ミスズは溜息をつきながらベッドルームに向かう。
倒れこむようにリネンに顔を埋めると、いつも使用しているアロマオイルの香りがして、強張っていた身体と心が緩んでいく。
薄い壁の向こうから、隣に住んでいる男女の談笑が聞こえてくる。
普段なら人の気配を感じることで、なんとなくホッとすることもあったが、今はこの薄い壁を境に「天国」と「地獄」がくっきりと分かれているようだと、ミスズは思った。
沢渡ミスズ。三十二歳。
ミスズはひとりだった。隣のカップルのように、心を砕くほど好きだと思える人もいない。家族もいない。孤独だけが、ぴったりと張り付くようにミスズの心の中に存在していた。
頭が痛い。吐き気もする。
睡眠不足にもかかわらず、微睡みはなかなか訪れてはくれない。
――いっそ、気を失ってしまえばいいのに。
ミスズは滲む目頭を隠すように、枕に顔をうずめた。
冷たいフローリングを叩く、アイフォンの振動音にミスズは少し微睡んでいた意識を取り戻す。
起き上がると、こめかみの辺りがズキリと鈍く痛む。
ゆっくりとベッドから降りて、床に置いたままだったアイフォンを手に取る。
時刻は二十二時二十五分。
ディスプレイには「優子」という文字が浮かび上がっている。
優子は学生の時からの親友だった。
だが今は住んでいる場所も離れているし、社会人になってからは会う回数も少なくなっていった。
そうしているうちに、優子は大学時代に交流のあった青年と結婚し、子供が産まれた。
家庭と仕事を両立して忙しく生活しているのが解っていたから、連絡はSNSでの短いやりとりが中心になる。
ただ、本当に寂しいときだけ、誰かの声が聴きたくなった時だけ、ミスズは優子に連絡をしていた。
――でも、優子のほうから連絡がくるなんて、めずらしいわね……
振動がとまり、不在着信と表示が切り替わる。
ベッドに腰掛けて、ミスズは優子に電話をかける。
「久しぶりね、優子」
『あれ? もしかして元気ない?』
「……よく分かったわね」
柔らかい声音が耳朶に届き、変わらぬ親友の様子にミスズは微笑んだ。
「いつもの頭痛で…でも、きっと寝れば治るから」
『大丈夫? 薬は飲んだの?』
「それが、ちょうど切らしてしまってたの……」
『それじゃあ、辛いよね? いつもミスズちゃん辛そうにしてたもん』
優子の声が心配そうに震えた。
いつもそうだった。
学生の頃から、優子は名前の通りに優しいと評判の女子で、他人の痛みに対してはとくに同情する子だった。ミスズの体調が良くない時、いつも心配してくれていた事を思い出す。
心配させると分かっていながら本心を打ち明けてしまう、そんな不思議な魅力が彼女にはあった。
「寝てれば治るわよ。それより、優子こそ何かあったの?」
『実は、今度東京でジュエリー展を開催することになったの……』
優子の職業はジュエリーデザイナーだった。
いつか、オーダー会を兼ねた個展を開くのが夢だと昔から言っていた。ジュエリー展をするということは、ついにその夢が叶うという事だ。
「ずっと念願だったものね。本当におめでとう、優子」
『ありがとうミスズちゃん……』
電話越しに優子はとても嬉しそうに笑った。
『でも、ごめんね。具合悪い時に……』
「体調良くなったら、また連絡するわね。日程とかも聞きたいし」
『うん! せっかく東京でやるから、ミスズちゃんにも来て欲しいよ』
「わかったわ。それじゃあ……」
『うん、お大事にね』
電話をきった後、ミスズは再びベッドに横になる。
隣の住人の談笑も、もう聞こえてこない。
相変わらずの頭痛に、早く眠ってしまおうとミスズが目を閉じようとしたとき、左手に握ったままのアイフォンが再び着信を告げる。
優子からだった。ミスズは横になったまま、アイフォンを耳に押し付ける。
『もしもしミスズちゃん?』
「うん、どうしたの?」
寝ころんだままミスズは応える。
『ミスズちゃん、ご飯食べた?』
「ご飯? 食べてないけど……」
『じゃあ、何か軽く食べるものと、薬を持っていくねっ』
「持っていくって……東京にいるわけじゃないでしょ?」
優子が住んでいるのは東京からだいぶ離れている。電車を乗り継いで二時間はかかる距離だ。
『そう。だからシンちゃんに持って行ってもらうね』
「シンちゃんて……」
ミスズの脳裏に浮かび上がる記憶。
『ミスズちゃん、一度会ったことあるよね』
「役者の、紀村真治……」
『そうそう、でも最近は活動してないみたいだけど。さっきバイト終わったみたいだから、ミスズちゃんのウチに向かってもらうね!』
ミスズは違う意味で頭痛がした。
忘れていた。優子は困っている人を放っておけないタイプだった。
おまけに、行動力もあるのが彼女の特徴だ。
役者の紀村真治。優子の遠い親戚。
ミスズは一度会ったことがあると言っても、ほんの数秒間、挨拶程度に顔を合わせただけだった。向こうだって覚えているかどうかも怪しい。
「でも、もう夜も遅いし、シンちゃ……紀村さんにも迷惑だよ」
『大丈夫だよ。困ったときはお互いさまだよ。それにね、ミスズちゃん……』
「え? なに……?」
『離れていても、辛いときは助けになるからね』
それ以上、ミスズは何も言えなくなった。優子は「他に必要なものがあったら、シンちゃんに頼んでね」と言って、電話をきった。そのあとすぐにLINEで、紀村真治の番号が貼り付けられたメッセージが届く。
――おかしなことになった気がする……けど、まあいいわ。
ミスズは目を閉じた。真治が来るのは時間的にまだ先だろう。住所が分かったとしても、小さなアパートだし、暗がりのなかでは見つけづらいだろう。
枕に顔を埋めて浅い呼吸をつきながら、ミスズは三年前に会った真治の姿をぼんやりと思い出す。
顔や姿をはっきりと覚えているわけではなかったが、ただ一つだけ、鮮やかに残っている記憶があった。
――すごくいい声だった……
記憶の淵をたどっているうちに、ミスズは眠りにおちていった。
静寂に包まれているアパートの部屋に響くインターホンの音は、ミスズを眠りから覚醒させるには充分だった。
いつの間にか眠っていたことに驚きながら、アイフォンを手に取る。
時刻は二十三時三十分。そしてディスプレイには、不在着信で登録のない番号が表示されていたが、きっと真治からだろう。
ミスズは崩れてしまった髪の毛を掻きあげながら、立ち上がった。
「ほんとに、来たのね……」
疑っていたわけではなかった。ただ、もし来なかったとしても驚きはしなかっただろう。
着替えをしていなくて良かった。白のブイネックになっているシフォンブラウスと、テーパードパンツ。寝転がっていた割に皺はあまり寄っていなくて、ミスズは安堵する。
息を詰めて玄関まで行くと、扉越しに人の気配がした。
回転式の小さな鍵を回して、ゆっくりと扉をあける。
すうっと夏の終わりを感じさせる、冷たさを孕んだ空気が隙間から入ってきて、ミスズの長い髪がふわりと舞い上がる。
視界に飛び込んできたのは、黒い瞳――
戸惑いと不安を含んだ黒い瞳に、ミスズ自身が映しだされているのが見えた。
――まるで、夜空のような色……
しっとりとしたその輝きに思わず見惚れる。しかしその刹那、ミスズは重力も引力も無い浮遊感を覚えて、気が付くとその場に崩れおちていた。
「大丈夫ですか!」
肩越しに叫ぶ声が聞こえた。
「病院にいきますか?」
「病院?」
ミスズは首を振った。
「寝てれば治るわ……よくあること、だから」
たいしたことじゃない、とミスズは応える。
ひんやりとした床に手をついて、重力に抗うように立ち上がろうとするが、足元がふらつく。
「じゃあ、横になりましょう。俺につかまってください――」
真治は、ミスズの身体に腕をまわした。シフォンブラウス越しに体温を感じる。
――熱い。
右肩に触れた真治の手のひらが熱くて、そこからじんわりとミスズの身体に熱がひろがっていく。
近づいた真治の衣服から、かすかにコーヒーの香りがした。
「ごめんなさい……」
ミスズは真治に支えられながらベッドルームに向かい、しわくちゃになったリネンに身体を預ける。
「薬は持ってきました。薬の前に何か食べたほうが良いと思うけど」
「今、何か食べたら吐いてしまいそうだから、薬があれば…」
ミスズはベッドの上で目を閉じた。
ガサガサとビニールの袋をいじる音がしたあと、真治はベッドのそばにやってきた。
「ミスズさん、少しだけ口開けて?」
耳元で囁くような声がして、ミスズはどきりとする。
言われるまま、口紅もとうに落ち切った血色の悪い唇をひらくと、それは口内に滑るように落ちてきた。
――冷たい。
舌の上で柔らかく溶け落ちていき、シャリとした細かい氷が喉を潤して、甘い香りが広がっていく。
バニラアイスだ。
「冷たくて、おいしい……」
こくりと飲み込んでからミスズは言う。
「良かった……俺も具合悪いときこれなら食べれたから。はい、もうひとくち」
再びミスズが口を開くと、食べやすい量のバニラアイスが落ちてくる。
真治の柔らかで少しだけ厚みのある声音と、バニラアイスの甘さと、そばに感じる静かな気配は、どれも自分への労りに満ちていて、ミスズはなんだかくすぐったいような気持ちになった。
「じゃあ、薬を飲んで、ゆっくり休んでください」
「ありがとう……」
真治が用意してくれた薬を飲んで暫くすると、ミスズは微睡んでいくのを感じた。
すぐそばで「おやすみなさい」という真治の声が聞こえた気がした。
――いつもと同じ毎日を繰り返しているだけだった。
それでも、広大な宇宙の中で惑星同士がいつしか近づき衝突してしまうように、繰り返している毎日にも、何かふとした出来事が起こることがある。
今がその時なのかもしれない、そうミスズは暖かな寝具に包まれながら思った。
少し前に目は覚めていたが、瞼は閉じたまま。昨夜の体調不良が嘘のように身体が軽くなっているのが分かる。
ふと蘇る、身体に触れた体温。優しさに溢れた声。バニラアイスの冷たさ。
ミスズは身体を起こした。
キッチンのほうから物音がする。
――まさか、
ミスズの鼓動が少しだけ早くなる。ガチャリと今度ははっきりと音がした。
ミスズはダイニングルームに続く扉をゆっくり開けた。
見慣れた部屋に紀村真治の後ろ姿を見つける。淡いブルーのシャツに、黒のコットンパンツ。足が細いせいか、実際より身長が高く見える。
昨夜は具合が悪くてそれどころではなかったが、さすが役者というだけあってスタイルもいいし、顔だちも良い。
年齢は確か二十五、六くらいだったか――
短く切り揃えている茶髪は前髪だけが少し長くて、頰にかかるように片側に流してある。骨ばった顎のラインがくっきりとした曲線を描いていて、美しいその造形にお世辞では無く、かっこいい男だとミスズは思った。
視線を感じたのか、ハッと真治が振り向く。
ミスズの姿を捉えて、バツのわるそうな表情をしながら「おはようございます」と真治は言った。
「あの、ユウ姉が心配だから泊まれって……。非常識だから無理って言ったんだけど……」
真治は目を伏せて言った。最後のほうは小さな呟きとなって消える。
ミスズは笑う。いかにも優子が言いそうな言葉だった。
「迷惑かけてごめんなさいね。こんな狭いキッチンとダイニングだし、寝るにも寝れなかったでしょ?」
「いえ……あの、それより具合はどうですか?」
「おかげさまで、もう大丈夫。薬が効いたみたい」
「良かった――」
安堵したように微笑む真治に、ミスズは目を細める。
――なんだか、不思議な光景だわ。
特に飾り気もないこの簡素な部屋が、真治という存在を得て、昨日までには無かった温度に満ちている。
「ミスズさん、お腹すいてませんか?」
そういえば……とミスズはお腹に手をあてる。昨日は薬を飲むためにバニラアイスしか口にしていなかった。
「そうね、結構すいてるわ」
「じつは、昨夜食べるかと思ってサンドイッチを買っていて、良かったら食べませんか?」
「嬉しいわ。せっかくだし一緒に食べましょう。コーヒーでも淹れるわ。あ、その前に顔を洗ってきてもいいかしら」
「じゃあ、俺が淹れますよ」
「そう? じゃ、そこのコーヒーマシン使って。必要そうなのは全部棚の中にあるから」
ミスズはそう言い残して、洗面台に向かう。
鏡にうつった自分の顔を見て、ミスズは少し驚く。
化粧は落ちきっていて、年相応の少しくすんだ肌色はいつも通り、それでもやはり、いつもの自分とはどこか違うのだ。
きゅっと上がった口角は、どこか嬉しそうな表情だし、柔らかく下がっている目尻のせいか、いつもより女っぽく見えた。
こんな自分を見たのは久しぶりだ。
――東京にきてから、はじめてかもしれない。
三年前に転勤で引っ越してきて、平日は仕事、休日もひとりで過ごすことが多かった。
家族はミスズにはいない。信頼できる友達もそばにいなかった。
それでも、一人でなんとかなっていた。
そう、例えば具合が悪くても、自分のことは自分で面倒みれていた。
孤独感は影のようにいつでも心にはりついていたが、誰かを希求するほどの情熱は少しずつ失われていった。
東京に来る前に別れた恋人は、ミスズのことを「どこか遠くを見ている女」と言った。付きあった期間はそんなに長くないのに、私の何がわかるのだろう、そう思っていた。
しかし今になって、その通りかもしれない……とミスズは思った。
東京にきてからも、その前も、すれ違うたくさんの人間と同じ時間軸を生きながら、自分の存在だけが切り取られて、孤独という別空間にのまれていくような感覚さえした。
だからだろうか。突然、日常に飛び込んできた真治の存在は、独りでいたミスズを少しだけ変容させたのかもしれない。
――誰かと一緒に朝食を食べるなんていつぶりかしら……。
着替えをして化粧水をたっぷりと肌になじませてから、真治のところに向かうと、キッチンからコーヒーの香りがした。
「ちょうど出来たところだよ」
見るとダイニングに置かれた小さな丸いテーブルの中央に、カットされたサンドイッチが真っ白な皿にきれいに盛り付けられている。そして並んでいる二つのコーヒーカップ。
「すごい。慣れてるのね」
「ただ切っただけです。でも、まあ……自炊はしてるし、あと喫茶店でバイトしてるし、こういうの好きなんだと思う」
「そうだったの」とミスズは頷きながら、床のクッションの上に腰を降ろす。
喫茶店でバイトをしてるのは初耳だった。
時々、優子が真治の話をしていた。真治の父親はどこかの会社の社長をしていること。家庭を顧みない人だから、母親は家をでていき、それきり連絡がとれないこと。次第に家に帰らなくなった父親のかわりに、真治は父親の愛人に世話をしてもらっていたこと。それから、役者になるという夢があるということ。
実は同じ歳の可愛い彼女がいることも優子から聞いていた。
ミスズが真治と顔を合わせたのは一度きりだったが、身の上話を聞いていたせいか、他人よりも近い距離に真治という存在を置いていた。
真治もまた、自分のことを優子から聞いてるのかもしれない。
「いただきます」
両手を合わせたあと、ミスズはコーヒーの入ったカップを手に取る。
それから、湯気と共に立ち上る香りを胸いっぱいに吸い込む。
「あれ? いつもと違うような……」
カップのふちに唇をつけ、一口飲む。
芳しい苦みと、それを包むように広がる柔らかな甘さ、これは――
「もしかして、シナモンが入ってる?」
「正解です。シナモンシュガーをいれてみました」
テーブルを挟んだ向かい側で、真治もカップに口をつけた。
シナモンシュガーなんて買っておいたかしら――ミスズは頭の片隅で思いながら、またカップを口に運ぶ。
「ちなみになんですけど、俺のバイトしてる喫茶店のマスターが淹れるシナモンカプチーノは、ほんとに美味いからオススメです」
「あら、それは是非行ってみたいわ」
他愛の無い会話。
そしてコーヒーのあたたかさが、ミスズの空腹の身体に染みわたっていく。
朝の陽ざしが少しずつ強さを増していき、レースのカーテンの隙間から真っ白な光が差し込んでくる。
コーヒーの香りと、陽だまりに包まれた穏やかな時間が、ミスズと真治の間に流れていた。