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消印  作者: 八尾
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田村聡

 車庫に車を止め玄関の門をくぐると、斉藤は門の裏側に回って郵便ポストの中を調べた。これは日課のようなものであるが、今回は何も入っていない。


家に入ろうと扉の前でかばんをまさぐっていると、玄関の上方に取り付けられたはめ殺し窓からにわかに光が漏れ、斉藤が鍵を開けるより先に扉が開いた。


「あ、ただいま」

「おかえり」


 斉藤の母が逆光を受けながら息子を招き入れるように立っていた。斉藤は口角を上げつつも怒った声色をしてみせた。


「お母さん、先に玄関開けちゃだめでしょう。不審者だったら大変だよ」


 すると、母はお茶目に笑う。

「車のエンジンの音でわかるよ。エンジンの音がしてすぐポストの音がしたら、亮太で確定。……今日もお疲れ様。仕事が遅い日はこれでひとまず終わりなのかな」

「うん」

「よかった。今日カレー作ってあるよ。温めてどうぞ」

「ありがとう」


 母は踵を返そうとして、思い出したように靴箱の上に手を伸ばした。そこには数枚のチラシ、一通の封筒と一緒に一枚のハガキが置かれている。


「そうそう、聡くんからハガキ来てたよ。今日夕方ポスト見て気づいたから家に入れておいた」

「そうだったんだ」


 母が差し出すままにハガキを受け取った斉藤は宛名に「田村聡」と書かれているのを認めた。そのまま目線を左上に移す。ちょうど切手を貼る辺りである。通常であれば郵便局名、日付、時間帯の三つの数字が書かれた消印がおされる場所だが、このハガキで特異なのはそういったよくある消印のかわりに風景の絵が描かれた印がおされているところにあった。


 斉藤はその印をじっくりと見た。背の高い荘厳な建物が描かれている。下側には「軽井沢」と印字されていた。


「聡くん、今度は軽井沢に行ってるんだって。夏休みの軽井沢とか、避暑のお客さんでごった返すだろうに本当にタフな子だわ。レストランのホールだってさ!」


 斉藤の横で母が声をかけた。ちゃっかりといち早くはがきを読んだようだった。


「そうだね風景印に軽井沢って書いてある。勝手に中身読まないでよ」


「ごめんて。ハガキって裏返すだけで見えちゃうんだもん。あと、聡くんの文章面白いし」


 言い訳しつつ反省の色はない。斉藤もハガキにプライバシーを求めるのは無理だとわかっているので、形だけ文句をいっておいてそれほど追求しなかった。


 差出人の田村は頻繁にはがきを送ってくるし、実際面白い文章を書いた。


書いた順に投稿していますー(悪文失礼しています)

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