ブラギウスの唄
ブラギウス星雲人は、常に美しい。
どんなときも、希望を失わない。
どんなときも、ただ一つの愛を忘れない。
それが生きもののあるべき姿だと信じて。
わたしはこの世の中で最も美しいものは何かと聞かれたら、ブラギウス星雲人と答えるだろう、たぶん。
なぜあの日、わたしがこんな「ゆめ」を見たのかはわからない。だけど、わたしが底知れない違和感を覚えていたのは確かである。あれから数年が経った今、わたしは何も知らずにいつもと同じように学校へ通い、意味もなく机に向かっている。皆が通る道を、皆と同じように通っていく。それがわたしの当たり前だった。
それが変わったのは、確かにあの日だった。吹奏楽部の練習が終わり、楽器を片付けようとしていたとき、わたしは見てはいけない何かを見てしまったのである。それを表現することは、残念ながらわたしのちっぽけな脳では出来ない。あまりにも突飛で、あまりにも非現実的すぎるから。
強いて言うなら、ウルトラマンに出てくる「ブルトン」のような生きもの。それが最初に見た「彼」だった。「彼」がどこからやってきて、何処でどう過ごしているのかさえも知らない。だけど、わたしは次第に幼い日に「ゆめ」で見たのと同じような「愛」を「彼」に抱くようになった。愛なんて、嘘くさい。そう思う人もいるかもしれない。だけど、この影にただ一つの「愛」という表現以外のどの表現が当てはまると言うのだろう。そう、わたしの心は誰が見てもおかしいと思うような状態だった。何もしない、正義の宇宙人。それが「ゆめ」で見た「彼」だった。そして、わたしはいつしかあの「ゆめ」と照合させ、「彼」を「ブラギウス星雲人」と呼ぶようになった。
いわゆる「ゆめ」から醒めたのは何時だろう。もう、あの日のことを思い出すことは出来ない。先ほども言った通り、形容できない誰かがわたしを襲っている。狂気、錯乱、今までのわたしにはありえないようなワードがまるで当たり前のように並んでいる。ああ、もうダメだ。そう思いながらも、現実に無理やりわたしを引き戻す。クラリネットを構えて...これが、わたしの奏でたメロディーか。
わたしがブラギウス星雲人なのかもしれない、本当は。