本野夢詩の童話考察①
童話「金の斧」といえば、一般的には正直に生きる大切さを説く童話であると考えられている。
考察に入る前にあらすじをおさらいしよう。きこりが仕事道具である斧を誤って川に落とすと、川から神様が現れ、金の斧や銀の斧を見せてあなたが落としたのはこの斧(金の斧や銀の斧)かと尋ねる。正直に自分の落とした斧をきこりが選ぶと神様は落とした斧に加え、金と銀の斧を渡した。他のきこりが真似をするが結果的に仕事道具である斧を失うことになる、という話だ。
しかし童話「金の斧」を読んでふと浮かんだ疑問がある。きこりの正直さは、神が考えている正直さなのか、ということだ。仮に、神様がきこりの正直さを無欲さから金と銀の斧を選ばなかったと判断したのなら、その判断は間違っている。なぜなら、きこりは自分の仕事道具である斧を早く返してほしい、という欲ゆえに金と銀の斧を選ばなかったからである。そう、金と銀の斧は、斧としては実用的ではないのだ。金や銀は、共に柔らかい性質を持つ金属であるためだ。
ただし、別の意味でこのきこりは評価されてしかるべきだ。なぜならこのきこりは、プロ意識の高いきこりであるからだ。仕事に誇りを持つからこそ、このきこりは、金や銀の斧という目先のお金に目がくらむことがなかったために、自分の落とした斧を選んだといえないだろうか。これが、私の考えるきこりの正直さである。
結論として童話「金の斧」は、仕事に対しての誠実な姿勢が重要だと言えるのではないだろうか。