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蠢く3

 レナを人質したエミリオがに城へ向かおうとした所をファビオが飛び掛り、エミリオを投げ飛ばした。

 打ち所悪く、エミリオは数時間後に死亡した。

 その知らせは、直ぐにレナの元へも届けられた。

「元々国外追放をされる様な罪を犯した者が、またこの城で事件を起こしたんだ。そうなっても仕方がない」

 誰もがそう口を揃えて言った。

「私の所為で……」

 また、自分の存在が人を不幸にした。

 あの時エミリオは言った。

『お前が現れたのがいけないんだ』

 エミリオの言う通りだ。もし、あのまま町で一人の民として生きていれば、ドミニク老人も、ドミニク老人を殺害した男も、アンも、そしてクレマン一家も不幸になる事は無かった。


 マルグリットは、レナの苦悩に気付いていたがそれどころではなかった。

 レナを暴漢から救い英雄扱いされ浮かれていたファビオは、エミリオの死に動揺し塞ぎ込んでしまっていた。当然だ。相手が犯罪者とは言え殺してしまったのだ。母として何かしてやれないかと思案するも、当のファビオがマルグリットを拒否している。今必要なのは母親ではないのだ。


「レナを救ってくれた者に、礼をしなければならないね」

 ルイーズの提案で、ファビオを交えての食事会が催された。

 コサムドラへ戻る前日の夜だった。ルイーズの誘いを断れる筈もなく、ファビオは沈んだ気分のままテーブルに着いた。

 ファビオの様子がおかしい事には、レナも直ぐに気付いた。

「そうかい、レナを助けてくれたのは、レナの教育係の息子だったのかい」

 ルイーズは終始ご機嫌だった。

 ルイーズの言葉に笑顔で返すファビオの心は相変わらず沈んでおり、今こそ自分が動くべきだ。レナは心に決めた、と同時にハンスとは違うファビオの逞しい腕の中を思い出す自分に少々戸惑った。



 ファビオはあの時の事を、思い出せないでいた。

 レナ様を助けなければ、そう思った次の瞬間には暴漢は倒れレナ様を抱きしめていた。

 あの男を殺したのは自分だ。ただ、何をどうしたのか全く思い出せなかった。



「奇襲をかけるのはどうだろう」

 フェルナンドはここ数日アルセンと二人、こうして毎晩の様にムートル国を攻め落とす策を考えていた。

「以前宮殿に暴漢が奇襲をかけた事が有るのですが、ブルーノ様御一人で制圧してしまわれました」

「しかしブルーノは魔人ではないのだから、何とでもなるだろう」

「しかし、ハンス王子が……」

「私があのギードに負けるとでも言うのか」

「いえ、そう言う訳では……」

 とにかく魔力を持った魔人は苦手だ。厳しかった父を思い出す。

「何だ、お前は父が怖いのか?」

 アルセンに心を見られ、ファビオは青くなった。

「あ、いえ、その、厳しい人でしたので。あ、いや私に魔力がないのがいけないのですが……」

 無意識に父を庇うような言葉が出た。

「それがおかしいのだ」

 アルセンに顔を覗き込まれた。

「な、何がでしょうか」

「魔人の血を引く者は、例え人間の血が混じろうとも魔人は魔人だ。魔力が無いと言う事はありえない、そう聞いているが」

 フェルナンドはアルセンの言葉に、身体が震えるのを感じた。



 コンコン

 部屋の扉をノックする音が聞こえた。とても豪勢な部屋だ。

 孫娘を助けてくれた礼として、今夜一晩この豪勢な客間がファビオに用意された。

 また母さんか。頼むから一人にしてれくないかなぁ。

 ファビオは寝たふりを決め込む事にした。

「ファビオ? 寝ちゃった?」

 レナの声にファビオは飛び上がり、慌てて扉を開けた。


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