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皇女物語(旧題 Lena ~魔人皇女の物語~)  作者: 弥也
守りの15歳
55/271

役目 始まった公務

●レナ…主人公。コサムドラ国皇女・魔人

●エヴァ…レナの親友

●ギード(ハンス)…魔人・ムートル国第二王子。ブルーノの弟。

●カリナ…ベナエシ国王女。ルイーズの義姉

●アミラ…レナの母・故人。

●リンダ…アミラの従姉妹。ギードの母。魔人。

●アンドレ…レナの父。コサムドラ国、国王。

●エリザ…レナのお付。魔人。

●ジャメル…エリザの兄・高級役人・魔人

●ルイーズ…レナの祖母

●ドミニク老人…コサムドラの高級役人

●ドミニク王子…ムートル国第三王子。ブルーノの弟。ドミニク老人とは遠縁。

●ブルーノ…ムートル国国王。

●レオン…レナの幼馴染。レナの事が好き。コサムドラ国警備隊幹部候補

●ドナルド・クレマン…野心家。元高級役員。レナを陥れようとし失脚。

●アン…コサムドラ国警備隊幹部候補・レナの同僚



ドミニク老人の死がきっかけで、レナは警備隊に公務へ行くことにしたのだが……


「必ずギードを見つけ出して、秘密を暴いてやる」

 ドナルドはレナにそう言い捨て、出て行った。

「レナ、大丈夫?」

 アンとレオンがレナに駆け寄ってきた。

「うん、大丈夫よ」

 平然と食事に戻るレナに、二人は思わず顔を見合わせた。



「私だったら、あんな偉い、あ、元偉い人か、あんな事を言われたら、怖くて」

 アンは、レナに尊敬の念を抱いた。

 一方レオンは、レナが遠い人になってしまった様な、寂しい気持ちに襲われていた。

「私もレナって呼んで良い?」

 アンの申し出に、レナは驚いた。

 そんな事、わざわざ了承を求められたのは初めてだった。

「勿論。私もアンって呼んで良いかしら」

「是非!」

 レナに、仲の良い同僚が出来た。



 警備隊幹部候補の仕事は、幹部の仕事を補佐しながら仕事を覚える事だ。

「レナ、警備隊での公務はどうだい」

 警備隊と皇女教育、それに魔人皇族の歴史書を読む事、レナには時間が足りなかった。

「一日が、後五時間程増えれば良いのに」

 思わずため息が出た。

「あまり無理をするんじゃないよ」

 アンドレの優しい言葉に、レナは微笑んだ。

「ありがとうお父様。でも、私は大丈夫よ」



 アンドレには見栄を張って大丈夫などと言ってしまったが、実のところ全く大丈夫な状態ではなかった。

 夕食後、入浴を済ませ、周辺国の歴史と魔人皇族の歴史を学ぶ。

 ここ数日は勉強をしながら眠ってしまい、ベッドに横になれないでいた。



「ねぇ、レナ。顔色が悪いわよ」

 アンには言われるまでもなく、自覚はしていた。

 間が悪く、月の物が昨日から始まったのだ。

 少しくらい顔色が悪いのは、仕方がない。

「大丈夫よ」

 そう言って棚の上の書類を取ろうと立ち上がった瞬間、目の前が真っ白になった。

「レナ!」

 レオンの声が聞こえた気がしたが、そのまま意識を失ってしまった。



 目がさめると、自室のベッドに警備隊の制服のまま横になっていた。

 慌てて起き上がろうとするが、何だか頭がくらくらする。

 そこへ、カーラが部屋に入って来た。

「レナ様! まだ横になっていて下さい」

 カーラに言われるがまま、再び横になった。

「後でお着替え、手伝いますね」

 そう言ってカーラは出て行ったが、入れ違いでジャメルが入って来た。

「最初から飛ばしすぎですな、姫君。お疲れが出たのですよ」

 レナは返す言葉がなかった。

「他の者と同じ様に働こうとするからです。姫君には、他の者がする必要のない事を、しなければならないのですから。暫く公務は午前だけにしましょう」

 ジャメルの提案に、レナは驚いて飛び起きた。

「ダメよ、他の人に迷惑がかかるわ」

「無理をされて、倒れる方が迷惑です」

 レナは、納得するしかなかった。



 カーラは、再びレナの世話ができる事が嬉しくて仕方がなかった。

 レナと内緒のお茶会の後、レナの病気を理由に部屋から遠ざけられた。

 最初は、レナの容態を心配していたが、時間が経つにつれ、違う思いに駆られるようになった。

 もしかして、レナ様に嫌われたのではないだろか。

 何か失敗をしてしまったのだろうか。

 舞い上がってしまっていたのか、あの日レナ様と何を話したのかすら覚えていない自分を呪った。

 一体、自分は何を話したのだろうか。

 日を追う毎に、絶望的な気分になった。

 もう、城で働く意味すら見出せなくなって行った。

 何事も平凡だった自分が、優秀なエヴァを差し置いて城のメイドに受かった時は、天にも昇る心地だった。

 しかし、それも父の友人による口添えだった。

 もう、何もかもがどうでもよくなり、メイドを止めてしまおう、そう決めた矢先にレナが回復したのだった。

 カーラは、何があってもレナに尽くそう、そう決めた。



 結局、警備隊でのレナの公務は午前だけとなった。

 こんなノンビリな仕事振りじゃ、ドミニクを殺した犯人を探し出せない。

 アンやレオンを巻き込むわけにも行かず、手詰まりになってしまった。



「レナ、我々王室の者が国の仕事へ公務へ出向くのは、そこで皆と同じ様に働く為ではないんだ」

 レナが、ドミニク殺害の犯人を自ら探そうとしているようだ。

 ジャメルから報告を受けたアンドレが、レナを心配して部屋まで訪ねて来た。

「でもお父様。私とドミニク王子しか犯人の顔を知らないのよ。私が捕まえるしかないでしょ?」

 焦燥感に駆られたレナは、今にも泣き出しそうだった。

「ドミニクは、レナにそんな危ない事をして欲しいとは思っていないと思うけどな」

 レナは、あの優しいドミニク老人の顔を思い出し、涙を流した。

「私もドミニクの死は辛いし、犯人が憎い。でも、犯人を捕まえるのはレナの仕事ではない」

「じゃぁ、私にできる事はないのですか?」

 レナの顔は、涙でぐしゃぐしゃである。

「自分で考えてごらん」

 アンドレは、それだけを言うと部屋を出て行った。



 レナは、犯人の似顔絵を描き始めた。

 あまり絵は得意ではない。

 何十枚も描き直し、納得出来る似顔絵が出来上がった。

「これが、ドミニク王子の見た犯人らしき男よ」

 ジャメルにその似顔絵を託した。

 程なくして、その似顔絵の男が捕まった。



「午後、お城に戻って何をしてるの?」

 アンには、レナの生活が全く想像出来ず思い切って聞いてみた。

「そうね、お庭を散歩して東屋でお茶をするの」

「素敵!」

「と言いたいところだけど、歴史や語学の勉強をびっしり。たまに近隣国へご挨拶へ行くくらいで、部屋に閉じこもって、勉強三昧よ」

「え……」

 アンは思わず絶句した。

「何か、優雅さも何もないわね」

「そうなのよね」

 レナは、未処理の書類に手を伸ばした。

「ああ、それほ私がやるわ。もうお城へ戻る時間でしょ」

「ほんと、城に戻らないと」

 幹部と一緒に外出していたレオンが戻ってきた。

「ドミニク様殺害の犯人、どうも強盗ではなかったみたいだ。誰かに雇われたらしい」

 レナは、心に何か引っかかるものを感じた。

「そんな重要な事、軽々しく口にするもんじゃないわよレオン」

 アンは顔をしかめた。

 真面目なアンは任務に忠実だ。

「直ぐに公表される事だよ、アン」

 レオンは、指摘を受けて少々むきになっていた。

「たとえそうであっても、然るべき機関が公表する前に人に伝えるなんてダメ」

 二人のこの手の口論は、今に始まった事ではない。

「でも、レナには良いだろう」

「それは……」

 さすがのアンも、これには言葉に詰まった。

 レナは国王の娘である。

「ありがとう、レオン。ドミニクさんの事件はずっと気になっていたの。短い間だったけど、可愛がっていただいたし」

 そう、犯人は捕まったのね。

 でも、やっぱり強盗じゃなかった。

 誰かのハカリゴトだった、と言う事ね。

 レナは、森へ行こうと決めた。

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