表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
皇女物語(旧題 Lena ~魔人皇女の物語~)  作者: 弥也
旅の始まり14歳
27/271

ブルーノ国王 レナの暴走

 普通の少女から皇女になったレナ。しかも、自分が忌み嫌われる魔人であると知る。

 その事で親友エヴァとも距離をとらざるをえなくなり、友を失う。

 しかし、皇女としての日々は待ってくれない。

 近隣国への挨拶のた旅が始まったが、最初の国で王に面会できない日々が続き、誘われるがままに街へ出てしまいギードと言う魔力を持った少年に遭遇する。

 どうやらギードはレナを探していたようだが、その後姿を消す。

 そして、隣国の王から手紙が届き、再び隣国へ向かう事になるが……。

「レナをムートル国に行かせて良いものだろうか」

 アンドレがジャメルの部屋に訪ねてきた。

「姫君に危害を加える気はなさそうだが」

「お前やエリザをまくとは、なかなかの者なのだろう」

 アンドレは、レナの事をまだまだ自分が守らなければならないと思っている。

 しかし、ジャメルは違った。

「姫君の魔力は誰よりも強い。暴走を防ぐ為にも、戦い方を学ぶべきだ」

「レナに戦えと言うのか!」

 アンドレは、思わずジャメルに詰め寄った。

「戦い方を知る事で、守り方も分かると言うもの。違うか」

 アンドレに返す言葉は無かった。



 結局、レナは予定通り再びムートル国へ向かった。

「ベル様のお茶が間に合って良かったですね」

「そうね、今日は大丈夫みたい」

 ベルお手製のお茶は、レナを馬車酔いから救ってくれた。

「ベルはお茶の調合が上手よね」

「ルイーズ様もですよ」

「お祖母さまも?」

「お二人の祖国は薬草が豊富ですので、代々その家の薬草の配合を」

「もういわ」

「え?」

「それ、いつか私も学ぶって事よね」

「そうです」

 学ばなければならない事が多すぎて、あっと言うまにおばあさんになってしまいそう。

 レナは、何だか馬車酔いのような気分になった。



 案内係のメイドが、部屋に案内してくれた。

「王の準備が整い次第、ご案内いたします」

 メイドお茶の準備をして下がっていった。

「ねぇ、エリザ、私直ぐに会えると思ってたんだけど、これって……」

「静かに待ちましょう」

 レナは嫌な予感がしていた。



 1時間程経った頃、突然扉が開いた。

「エヴァ! じゃ、ないんだっけ」

 入ってきたのは、ドミニクだった。

「ドミニク!」

 レナも椅子からと飛び上がり、再会を喜ぼうと駆け寄ろうとしたが、エリザに足を踏まれた。

「レナ様、ご挨拶はきちんとなさって下さい」

「あ、ごめんなさい。えーっと、ムートル国王子ドミニク様、お久しぶりでございます」

 レナは、かしこまって挨拶をしたのだが、それを見たドミニクが大笑いをした。

「そんな風にしたら別人だね」

「笑うなんて失礼よ」

「それは失礼いたしました、レナ姫様」

 ドミニクが、うやうやしく挨拶をした。

 今度はレナが笑う番だった。

「ねぇ、もう良いでしょエリザ。私とドミニクは友達なのよ」

「仕方ありませんね」

 流石のエリザも他国の王子を叱る訳にもいかず、渋々納得した。

 とは、言うものの……。

「何を話せばいいのかしらね」

「僕さ、レナに聞きたい事があって、来たんだ」

「なに?」

「レナの国に、ドミニクって人居る?」

 レナの頭に浮かんだのは、ドミニク老人だった。

 ドミニクと言えば、あのドミニク老人しか思い浮かばないけど……。

「いらっしゃるけど……」

「どんな人?!」

 ふと、エリザが思い出した。

「確かドミニク様のお母様亡くなった先代王妃様は、あのドミニク老人と御親戚でしたね」

「そうなんだよ! 僕の名前も、その人から貰ったんだ!」

 誇らしそうなドミニクの顔を見て、これは是非ともドミニク老人に合わせてあげたいとレナは思った。

「ねぇ、レナ、その人はどんな人なの!」

「そんなに気になるなら、是非我が国へお越し下さいドミニク王子」

「行っていいの? 僕、レナが国に戻る時に、一緒に行くよ!」

 レナは冗談のつもりで行ったのだが、ドミニクは本気にしてしまった。

 やはりまだ十歳の少年だ。

「そんな事、勝手に決めてしまって良いの?」

 まぁ、街中にフラフラと出掛けたり出来るんだから、問題ないのかしら。

 それにしても自由過ぎる気がする。

 レナが、そんな事に思いをめぐらせている事に気が付いたドミニクが、とんでも無い事を言った。

「国王様も公務もしないで人に任せっきりで遊んでるんだもん。今日もだよ。僕だけが自由にしてるわけじゃないもん」

 この国は、国王が公務もしないで遊んでるですって?

 今日も、ってどういう事よ。

 今日も面会無しなの?

 レナは王との面会を待ち続けた日々を思い出した。

 ただただ、無駄に流れた時間を。

「どうかした?」

 レナが急に黙り込んだので、ドミニクは心配になった。

「国王様は、今日も遊んでいらして公務をなさる気はない、という事ね?」

「う、うん……」

「ドミニク、ブルーノ兄さんはどこに居るの?」

「国王様をそんな風に呼んではいけません!」

 エリザが注意をしたが、レナの耳には届かない。

「僕が兄さんの所まで案内するよ!」

 ドミニクが嬉しそうに先に走り出す。

「レナ様、いけません!」

 エリザの制止も聞かず、レナはドミニクの後を追った。



「ブルーノ兄さん!」

 一番下の弟、ドミニクが部屋に飛び込んできた。

 両親が亡くなって以来、ドミニクに厳しく教育する者が居なくなり、自由奔放な子になってしまった。

 ノックも無しに部屋に入ってくるなんて、何て無作法なんだ。

「ノックもしないで入って来るなんて、失礼だぞ」

 ブルーノは、本から目をそらす事なく、言った。

「人の顔も見ないで話すのも十分に失礼よ。それに、他国から来た客人を待たせ続けるのは、もっと失礼よ!」

 聞きなれない少女の声に、思わず顔を上げた。

「君、誰……」

「兄さん、レナだよ!」

 ブルーノは、手にしていた本を下に落とした。



「あの、ほんと、私失礼をしてしまって、ごめんなさい」

 レナは入って来た時の勢いを失っていた。

 ドミニクの兄だと言うから、勝手に同い年から、もしかしたら自分より年下かと思っていたら、ブルーノ国王は成人を向かえた立派な青年だった。

 怒りをぶつけようとした相手が、思いのほか大人だったため、何か子供の自分には分からない事情があるのかもしれない、と思い何も言えなくなってしまった。

「兄さん、レナが怒るのも無理ないよ。レナは、兄さん会うためにずっと待っててくれてたんだよ」

「そして、ドミニクお前が街に連れ出して、騒ぎを起こした」

「あの、それは、私が付いて行ってしまったのが悪いんです」

「レナ姫」

「はい!」

 レナは名前を呼ばれて、突然緊張してしまった。

 よく考えたら、他国の王と会うのは、生まれて初めてなのだ。

「どうして、急にこの部屋へ?」

「あの、えっと……」

 突然核心を突かれたレナは、一瞬たじろいだ。

 が、部屋を見渡して再び怒りが湧き上がってきた。

 ブルーノ王がノンキに本に囲まれ遊んでいる間、レナは無駄な時間を強制的に過ごす羽目になった。

「あの、ブルーノ王に一言、いえ、もっと申し上げたい事があって参りました」

「なんでしょう」

 ドミニクは、今から何が起こるのかわくわくしていた。

「王は、ここで何をなさっているのですか?」

「何をって、見て分かりませんか」

「ノンキに本を読んでいらっしゃる」

「そうです」

「その間、私は何をしていたと思われますか?」

「え?」

「王との面会を待っていたんです」

「そうですか」

「そうですかじゃないわよ!」

 レナは相手が他国の王であると言う事を完全に忘れてしまい、大声を出してしまった。

 部屋にメイドや役人達が集まってきた。

 中にはエリザの姿もあった。

「レナ様!」

 エリザの声で、レナは自分が置かれている状況に気がついた。

 集まった人を見て急に恥ずかしくなったレナは、急いで部屋を出た。

 その後を、エリザが追う。

「エリザ、帰りましょう! 馬車を用意して!」

「はい」

「ねぇレナ! 帰らないで!」

 ドミニクが追いかけてきた。

 レナは足を止めた。

「ねぇ、レナ帰らないで。今日は泊まって。お願い。僕レナと話したいことがいっぱいあるんだよ! ねぇ、お願い!」

 ドミニクに懇願され、一晩だけここに留まる事を約束してしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ