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皇女物語(旧題 Lena ~魔人皇女の物語~)  作者: 弥也
愛しさの19歳
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復活18

「タルメランが関係しているなら、私も同席するから」

 レナも、ソーニャと同意見だった。ソーニャの言う事が本当であれば、ソーニャはタルメランの叔母にあたるのだ。


 ハンスと、人形を抱えたレナがアンドレの執務室に向かっていると後ろからアルセンが息を切らせてやって来た。

「タルメランが此方に来るかもしれない!」

「どういう事!」

 レナの背中が恐怖で凍り付いた。

「とにかく、手紙を見よう。アルセンも来て」

 手紙に何か仕掛けがされいるかもしれない。魔力を使える者は一人でも多い方がいい。

「分かった」

 三人は執務室へと急いだ。


 アルセンにタルメランの動向を知らせたのは、オクサナだった。

 タルメランがリエーキから再び姿を消した事を、息子が切り落とした指から知ったその数分後、一人の老人がエヴァの店に姿を現した。

 ただものじゃない。

 オクサナはすぐに気付いたが、何も気付かないエヴァは和かに迎え入れてしまった。

「いらっしゃいませ。何にいたしましょうか」

 この老人は、自分が魔人であると明らかに気付いている。間違いない、この老人がタルメランだ。

「実は、知り合いの娘さんが女の子を産んだのでな、そのお祝いの品を届けに行こうかと思って」

「でしたら、このお菓子はどうですか?」

 城へ行こうとしている! アルセン様に知らせなくては。しかし、今ここで魔力を使うのは得策ではない。

 オクサナは、店の裏口から外に出て、近くで遊んでいた子供に菓子を与え手紙を託した。

 慌てて店に戻ると、タルメランがエヴァから嬉しそうに贈答用の菓子を受け取るところだった。

 この老人は、今私が何をしたかも分かっている。

 そう直感したオクサナは、タルメランを見つめた。今はここでエヴァを守るのが自分の役目だ。何かあれば、命を懸けてでもエヴァを守る。

 そんなオクサナに、タルメランは微笑みかけそのまま店の外へと出て行った。

「あら、オクサナさん、どうかした? 何だか怖い顔」

「いえ、何でもなわ」

 今は、タルメランが城に着く前にあの手紙がアルセンの元に届く事を願うしかない。タルメランには、リエーキに居る息子と繋がっている事は知られたはずだ。もし、ジョアンの耳に届けばあの子達は窮地に陥る。


 薄い薄い封筒だった。

「開けるわよ」

 レナの提案で、アンドレはルイーズの子供部屋に避難していた。あの部屋は、城の中でも鉄壁の守り施されている。

 ハンスとアルセンに緊張が走った。

 レナが封を開けた。

 封筒の中は一枚の便箋が入っているだけだった。

「何も起きないわ」

 ハンスは、レナの手にある便箋を覗き込んだ。


『レナ

 ファビオの命が危ない。手を貸して欲しい。』


「これだけ?」

 レナは息を大きく吸った。どうやら息をするのを忘れていたようだ。

 アルセンは、封筒を調べたが何も起きなかった。

 その時、城の中にいる魔人全員に戦慄が走った。

 子供部屋では小さなルイーズと、避難していたカーラとエリックの子ピエルが、二人同時に火が着いたように泣き出した。


「来たわね」

 レナの一言で、ハンスとアルセンは事態を飲み込んだ。


 ルイーズの子供部屋から、一番遠い応接室にタルメランは通された。

「お待たせしました」

 応接室に現れたのはハンスだった。

「おや、ハンスか。私はレナに面会を申し込んだ筈なんだけどね。ああ、これは姫君誕生のお祝いだよ」

 エヴァの店で買った菓子を、ハンスに手渡した。

「ありがとうございます。話は僕がお聞きしますよ」

 タルメランは、静かに笑った。

「手紙は読んでもらえたのかな」

「はい」

「レナは何と」

「何とも」

 そんな二人の様子を、部屋の隅でソーニャは見ていた。

 あの爺さんが、姉タチアナの子……。どうして、人に迷惑をかけるのか。人に迷惑をかけちゃいけないなんて、子供の頃に教わる筈なのに、教育すらして貰えなかったのだろうか。あのタチアナなら考えられる。この人形の手足が動くなら、近付いて行って引っ叩いて叱りつけてやるのに。

「私はレナと話をするまで、ここで待つとしよう。そう、何百年でも待つ」

 タルメランは、そう言って笑った。

とうとうタルメランが、城に乗り込んで来ました。

ルイーズは大丈夫なの?

ベナエシの後継者問題はどうするの?

ファビオは?

ジョアンとマルグリットは?


(あと数話で治るの?)


次話も、よろしくお願いします。

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