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皇女物語(旧題 Lena ~魔人皇女の物語~)  作者: 弥也
愛しさの19歳
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復活17

「短い間だったけれど、色々教えてくれてありがとう。私はコサムドラに帰るから、ソーニャ貴女とはお別れね」

 アルセンと共に出発するまで一時間を切った。ソーニャには墓に戻ってもらわなければ、このままにして置くわけにはいかない。あまり墓から離れすぎるとカリナのように魂としても存在していられなくなる。

「あら、私は一緒にコサムドラへ行くつもりだったんだけど」

 ソーニャは、墓に戻る事を拒否した。

 たった十六年生きて殺された人生だけど、こうしてレナに起こして貰えて死後何百年も経過した世界を観れるのだ。もっと見たいと思わない者はいないだろう。

「でも、あまり墓から離れてしまうと魂も消滅するかもしれないのよ。何度も説明したじゃない」

 時間がない。

 レナは少し苛つき始めた。

「危ないと思ったら、此処まで連れ帰ってくれれば良いじゃない。その為に魔力移動をおしえたのよ?」

 確かに、返す言葉もないレナは、判断に迷ってしまった。

「何もレナが迷う事ないのよ。もし、本当に魂が消えてしまっても、レナが起こしてくれなければ、私は消えているのと何も変わらない状態で、あの石の下で眠り続けただけだもの」

 ソーニャの言う通りかもしれない。それに、ソーニャからは聞きたい事が、まだまだ沢山あった。

「仕方がないわね」

 とうとうレナが折れた。納得した訳ではなかったが、今ここで話す時間はもうなかった。

「出発の時間だわ。大人しくしていてね」

 レナは人形を抱えたまま、コサムドラへ帰る事になってしまった。

 ベナエシに居る間に魔力移動を習得出来たのは、ソーニャのおかげだし、何があったかまでは話してはくれないけれど十六歳で姉に殺されてしまったソーニャに憐れみも感じていた。


「その人形は……」

 流石にアルセンの目を誤魔化す事は出来なかった。

「ちょっと成り行き上ね。それ以上は聞かないで」

 あまり人形の話をすると、大人しくしているソーニャが我慢出来なくなってしまう。

 アルセンも、それ以上聞いてくる事はなかった。


 コサムドラへの帰りの移動で、レナは初めて魔力移動の距離を伸ばす事に成功した。

「こんな短い間にできる様になったのは、その人形が関係してますね。まさか、カリナ様が……」

「私はソーニャよ、オジさん」

 生まれて初めてオジさんと呼ばれたアルセンは、目を白黒させた。

「何だか生意気な人形ですな」

 レナは、苦笑いをするしかなかった。


 コサムドラの城に無事到着すると、一目散にルイーズの子供部屋に向かった。

「ルイーズ! 会いたかったわ!」

 ルイーズも、母の帰りに気付いたのか上機嫌で声を上げた。

「このお人形は……ルイーズ様へのお土産という訳ではなさそうですね」

 君悪そうにエリザが人形をつまみ上げた。

「下してよ、おばさん」

 つままれたのが気に入らないソーニャは、大人しくしていると言う約束を忘れてしまったようだった。

「おバッ……」

 エリザは人形を睨み付けた。

「レナ様、この失礼な人形は何です」

 今度は、涙が出る程笑った。


 ハンスは、ベナエシの庭の隅に少し大きな石があった事を覚えていた。

「あれが墓石だっただなんて、聞いた事なかったけどなぁ。それにしても、ベナエシで何をしてたんだよ」

「ルイーズを守る為なら、何でもするわよ」

「ちょっと、父上の執務室で話があるんだ。帰ったばかりで疲れてるだろうけど、来てくれないかな」

 ハンスは、タルメランからの手紙をレナに見せようと執務室へと誘った。

「あら、ここじゃダメなの?」

 普段、互いの意識の中へ侵入しないためハンスの意図がレナには伝わらなかった。

「あの人から、レナ宛に手紙が来たんだよ」

「あの人?」

 まさかタルメランが手紙を寄越すとは思いもしないレナに、伝わるはずもなかった。

「タルメランだよ」

 レナの目が、大きく見開かれた。


ソーニャ……。

好きだわソーニャ。

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