復活15
タチアナに王子から求婚の手紙が届いた事は、瞬く間に街中に広まった。
「見た目だけで結婚相手を決めるんだね、王子様は」
親族が集まってのお祝いの席だった。
神の悪戯なのか、小さな声で呟いたつもりだったのに、賑やかなお祝いの席でほんの一瞬の静寂が訪れたタイミングだった。
親族達はソーニャを見つめ、タチアナの顔は真っ青になっていた。
「ソーニャ、席を外しなさい」
久しぶりに、母から名を呼ばれた気がした。
ソーニャの母は、この落ちぶれた貴族の家に持参金目当てで求婚され嫁に来たのだ。そして金目当てでしか求婚されなかった自分の顔が大嫌いで、自分に瓜二つなソーニャを認める事が出来なかった。
ソーニャは、素直に母の指示に従い椅子から立ち上が。親族の冷たい視線を浴びながらテーブルを離れた。そして、二度と母から名を呼ばれる事はない、そう覚悟した。
「ねぇ、レナ」
特にする事のない時間、レナはソーニャの墓の側で過ごす事にした。起こしてしまった責任もある。
「なに?」
そろそろ祖母ルイーズが、コサムドラに着く頃。ルイーズは機嫌よく起きていると良いんだけど。
レナは、ぼんやりとそんな事を考えていた。
「本当に、タルメランが五百年前にこの国を失ったの?」
「そうよ。それだけは間違いないわ」
ソーニャが、この事を聞くのはもう何回目か。戦いに破れ、タルメランが村へと向かうあの日をレナは記憶から追体験したので、それだけは間違い無いと言い切れた。
「そして、魔人皇族のとして復活を目論んでる」
「そう」
ソーニャは、それから数分なにも言わず考え込んでいた。
「タルメランは、悪い人?」
魔人国を取り返そうと、生き延びる為に生き血を飲み続けたタルメラン。
「多分……」
タルメランのしようとしている事は、ルイーズの母としては絶対に許せない。もし、ルイーズの生き血を奪おうとするなら命懸けで戦う。でも……。
「私にも分からない。復活の儀式さえしなければ……」
「そう……。レナは子供に会いたくないの?」
「え?」
「退屈そうに、ここに居るなら会いに行けば良いじゃない」
そんな事ができるなら、今直ぐにでもしている。
「私、魔力移動が出来ないの」
「どうして?!」
レナの告白に、ソーニャは驚いぐいっとレナに近寄ったら。
「子供の頃に訓練をうけなかったから……」
「そんなの訓練を受けなくても、赤ん坊でもするわよ?」
ソーニャの話を聞く前に、レナの生い立ちを話す羽目になってしまった。
コサムドラの城にルイーズが到着した。
ルイーズの運んで来た荷物は、殆どが小さなルイーズへの贈り物で、荷解きを手伝うハンナが呆れる程だった。
「さぁ、ルイーズ。大婆様のところへいらっしゃい」
小さなルイーズは、ルイーズの腕の中でご機嫌な笑い声を上げた。
こんなに穏やかな気分になるのは、何年ぶりだろうか。
ルイーズは、小さなルイーズの柔らかい頬にキスをした。
同じ頃、アンドレの執務室ではハンスとアンドレが難しい顔をして一通の封筒を見ていた。まだ、開封されていないその手紙は、レナ宛の手紙だった。
「お呼びでございますか」
エリザは執務室に入るなり、妙な気配を放つ封筒に気付いた。
「これは……」
「やはり普通の手紙ではないのか?」
アンドレには、少し癖のある字で宛名書きされた封筒にしか見えない。
「レナ宛だし、レナの元に早馬で届けようと思ったのだが……」
「これは、このままレナ様がお戻りになるまで開けてはいけません。何か魔力がかかっています」
エリザは、その封筒に近付く気になれなかった。危険な気配しかしないのだ。
「僕はレナが開封する事も反対です。でも、レナの判断に任せましょう。兎に角、他の手紙と一緒にレナの帰りを待つのが一番かと」
そう言ってハンスが封筒を裏返すと、そこには『タルメラン』と書かれていた。
次話も、よろしくお願いします。
(♪ラブレターフロームタルメラ〜ン♪
しまった字余りだ。そして年がばれる)




