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皇女物語(旧題 Lena ~魔人皇女の物語~)  作者: 弥也
愛しさの19歳
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復活9

 ルイーズもこんな場所にこんな古い墓が有るとは知らなかった。

「子供の頃から、この辺りでは遊んでたのに全く気付かなかったわ」

 やはり、一族の墓から少し離れた場所にそれはあった。

「ありがとうお祖母様!」

 レナの喜び様とは逆に、ルイーズは心配になってしまった。

「また無茶な事をするんじゃないよ」

「はい、分かってます。ちゃんとお留守番してるわ」

 無茶な事はしない。ただ、お墓に眠るご先祖様に話を聞くのと、魔力移動の練習だけ。

 心配そうに出発したルイーズは数日後にはコサムドラに着く予定だ。


 やはりハンスにも来て貰うべきだったかもしれない。一人で対処出来る事態で済めば良いけど……。もし、自分が何百年もの眠りから突然叩き起こされたらどうするだろう。怒るのか、喜ぶのか。

 一晩考えたが、考えたところで現状が変わるわけでは無い。ならばやるしか無い。

 翌日、朝からルイーズから頼まれた幾つかの書類に目を通しサインをする仕事に集中し、夕方時間を作って墓に向かった。


「レナ姫様は、毎日のように時間を見付けてたご先祖に花を手向けられる、心美しいお方」

 ベナエシの城の中では使用人達が、そんな風にレナの事を噂していたが、まさか叩き起こそうとしているなどとは思いもしていなかった。

 もし、ご先祖がそれも元魔人のご先祖か、ウロウロと墓の周りをうろつく様な事になったら、ごめんなさい。

 レナは、思い切って石に彫られた文字すら読み取れない古い墓石に手を触れた。


「今日実行しようと思うんだよ」

 緊張の面持ちでリリーがジョアンの耳元で囁いた。

 どうりで朝からソワソワしていた訳だ。一体何を実行するつもりなのかは知らないが、揉め事はこれ以上ごめんだ。

「母さん、今日は天気が悪いから明日にしたらどうです?」

 リリーは、少し眉間にしわを寄せて考えていた。

「確かにジョアンの言う通りだけど、もう仲間達が始めちゃってるから後戻りは出来ないよ。大丈夫、ジョアン。母さんが全て丸く収まるようにするから」

 ジョアンはリリーに握られた手を、振り払いたい衝動に駆られた。

「ありがとう母さん」

 上手く笑えただろうか。手を通して、母にこの苛立ちが伝わってしまってはいないだろうか。そして、どうしてこんなに母に気を使って生きなければならないのか。


 タルメランは、また一人街から少女を連れ去って来ていた。

 今日はジョアンの用意したメイドが休みの日だ。リエーキに来てから、何人の娘を連れて来たか。ファビオさえ目覚めてくれれば、全ては上手くいくのだ。

「まぁ良い。無理矢理にでも目覚めさせてみせるさ」

 タルメランは、つい先程まで連れて来た娘の身体を流れていた血がなみなみと注がれたカップを眩しそうに眺めて飲み干した。


 リリーが若い娘の生き血を飲んでいる。

 そんな噂が囁かれる程、リリーは若々しかった。

「本当にリリー様は、お美しいわ」

 そんな言葉が耳に入る度、リリーは更に若々しくなって行くようだった。

「特別何もしてはいないのよ。皆さんがそう仰ってくださるから、身体がそう反応してしまうのかもしれないわね」

 そんなリリーの楽しそうな声が耳に入ると安心した。


 リリーが訪ねて来るのは、朝から分かっていた。

「タルメラン様は、ファビオの様子はいかがです?」

 声が震えないように平静を装っている姿が、タルメランには心底可笑しかった。

 これ程明らさまに命を狙われるのは、何百年ぶりだろう。

 さて、どうするか。


 冷たい石が熱を持ったと思った瞬間、若く背の低い女が現れた。

「だれ、あんた」

 魔人とは言え王の一族だろう女の話し方とは到底思えない。

「あ、あの、私はタルメラン様の、あれなんだっけ…」

 年老いた魔人が現れると思っていたレナは、予想外の出来事に混乱してしまった。

「タルメラン誰それ」

 女は面倒くさそうに欠伸をした。

次話も、よろしくお願いします。

(墓見つかったと思ったら、何か予定外の人がww誰、この人w)

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